産経新聞の加藤達也前ソウル支局長が書いた朴槿恵大統領に関するコラム記事をめぐる問題で、ソウル中央地検が8日、情報通信法に定める名誉毀損に当たるとして、同氏を在宅起訴した。外国の報道関係者に同法が適用されることはきわめて異例のこと。国内外の報道関係者から、「報道の自由を侵害する懸念があり、起訴すべきでない」との意見を無視した格好となった今回の起訴は、政治問題化することは避けられない。

コラム記事は、多数の高校生が亡くなったセウォル号沈没事件が起きた4月16日、朴大統領の動向が7時間にわたって確認できなくなった間、同氏が男性と出会っていたという内容を、韓国紙「朝鮮日報」などの情報を引用して報じたもの。事件当時の朴大統領の所在を問うことは公共性が認められ、起訴は言論機関への挑戦といえる。国際NGO「国境なき記者団」も不起訴を求めていた。

在宅起訴を受けて、岸田文雄外相は、「報道の自由、あるいは日韓関係にも影響するということで、懸念を持っていたし、韓国側に慎重な対応を求めてきたところだ」と語った。サキ米報道官も、「米政府は言論の自由、表現の自由を支持し、これまでも韓国の法律に懸念を示してきた」と述べ、韓国側の法制度に懸念を示した。

しかし、韓国国内では、国会議員や地方自治体の首長などの公職者が、メディアを相手取って訴訟を起こすケースが年々増えており、言論の自由はすでに侵害されている。1990年代中盤までは、年間1~3であった訴訟の件数は、2000年代には5~9件に増加。民事訴訟におけるメディアの勝訴率は3割にとどまる。最近でも、ネット掲示板で朴大統領を中傷した女性主婦が今月1日、懲役4カ月、執行猶予1年の判決を受けた。なお、今までに2件あった刑事訴訟では、いずれも報道機関が有罪判決を受けている。

さらに問題なのは、最初に朴大統領の所在を記事にした朝鮮日報の記者は起訴されず、その報道を引用した産経新聞の記者が起訴されたということだ。従軍慰安婦問題などで韓国側を批判する産経新聞のスタンスに腹を立てた朴大統領が、「見せしめ」の目的で、起訴を後押ししたと捉えられても仕方がない。

言論の自由が守られているかどうかは、民主主義国家であるか否かを示す重要な指標の一つだ。政府に都合が悪いからといって、その言論を封殺することになれば、中国や北朝鮮と変わらない。ソウル前支局長の解放は当然のことであるが、朴大統領には、批判を受け入れるだけの器量も求めたい。(山本慧)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『守護霊インタビュー 朴槿惠韓国大統領 なぜ、私は「反日」なのか』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1114

幸福の科学出版 『韓国 朴正煕元大統領の霊言』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=1051

幸福の科学出版 『安重根は韓国の英雄か、それとも悪魔か』 大川隆法著

http://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=981

【関連記事】

2014年3月号記事 救韓論 韓国が「近代化」する5つの方法

http://the-liberty.com/article.php?item_id=7263