今年5月に「日本維新の会」が分裂し、「次世代の党」「維新の党」が生まれた。

ここまでの経緯は複雑だ。2012年末、石原慎太郎氏ら率いる「太陽の党」(「たちあがれ日本」が前身)は、橋下徹氏が率いる「日本維新の会」(「大阪維新の会」が母体)と合流。「日本維新の会」が誕生した。

両党が合流の拠り所とした共通項は、「中央集権体制の打破」「道州制」などを主張していること。しかし、石原氏が強く訴える「自主憲法の制定」など、他の論点に関しては温度差や違いが残った。あまりにも妥協の産物に見える合流に、当初から疑問の声は上がっていた。

それでも同党は、同年末の衆議院選で、最大野党の民主党に迫る議席数を獲得。マスコミからは「維新躍進」と騒がれた。こうした中、同党が強調し始めたのが「野党再編」だ。これは、民主党が勢いを失う中、一人勝ちする自民党をチェックする、新しい野党の出現が望まれるという考え方。これによって、他の政党とも合流して人数を増やし、民主党に代わる最大野党を目指すという方向性が出てきた。

橋下氏などが特にこの方向を強調し、「みんなの党」を離党した江田憲司氏などが結成した「結いの党」と合流する話が持ち上がった。

しかし、ここで石原氏が難色を示す。「結いの党」は「戦後、日本国憲法が果たしてきた役割を正統に評価」という綱領を掲げるなど、護憲政党だったからだ。一方の橋下氏は、政策の違いよりも「野党再編」の優先を主張。石原氏と橋下氏の、スタンスの違いが表面化した。

その結果、今回の分党に至った。石原組は党名を「次世代の党」とし、橋下組は「結いの党」と合流して「維新の党」となった。

そうした内幕は、石原新党「次世代の党」所属の衆院議員・中丸啓氏の著書『次世代の大和魂たちへ』(青林堂)に詳しい。党分裂の火中にいた中丸氏は、橋下氏が様々な方法で石原氏に妥協を迫る経緯や、中丸氏ら一部議員が石原氏に「自主憲法制定の信念を貫くべき」と強く働きかけるところを描写している。

小党ほど、他党と協力して大きな勢力を持ち、政治的影響力を持つことの誘惑は大きい。その中で政治家は、信念や政策を妥協させるべきか、頭を悩ませるだろう。しかし、中丸氏は「野党再編といえば聞こえはいいが、信条を捨てて野党議員が集まったところで、結局は烏合の衆にならざるを得ない」と、勢力拡張に固執する姿勢に疑問を投げかける。

いわゆる第三極の合流・分裂の様子を見ていると、政治家が本心を語ることの難しさと大切さについて、考えさせられる。「次世代の党」の今後を見守りたい。(光)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『徹底霊査 橋下徹は宰相の器か』 大川隆法著

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