東京大学宇宙線研究所は、アインシュタインが予言した「重力波」を直接検出するための装置、大型低温重力波望遠鏡「KAGRA(かぐら)」に用いるトンネルを、岐阜県飛騨市神岡町の地下200メートルに完成させていたが、このほど、報道関係者に公開した。

アインシュタインの一般相対性理論から、重さを持つ物体は、その重さで周辺の空間を歪めていることが分かっている。その歪みは、物質が動くときに波として周囲に伝わる。これを重力波と呼ぶ。

この重力波は極めてかすかなもので、人が歩いたとか、トラックが走った程度では検出されない。巨大な星が爆発するときに出る重力波による空間の歪みであっても、太陽と地球の距離(1.5億キロメートル)に対して、原子1個ほど伸びたり縮んだりする程度だという。

この気の遠くなるほど小さな歪みを検出するため、KAGRAでは、直線状の3キロメートルのトンネルを端で直交するようにL字型に作った。重力波で空間が縦に伸びると、同時に横に縮むからだ。トンネル内にレーザー光線を通し、鏡で数十回反射させることで70キロメートルほどレーザー光線を走らせて、直交部分で二つのレーザーを重ねる。重力波が届くと、それぞれのトンネルの長さが伸び縮みし、レーザー光線の干渉縞ができるため、その様子を観察する。実験の精度を上げるため、鏡を-253℃に冷却するなど工夫を凝らすという。

重力波のうち、検出可能なほど大きなものは、太陽の数倍重い星が爆発する際や、中性子星と呼ばれる極めて密度の高い星が自転したり、合体したりする際に放出される。装置の感度が上がるほど、遠くで起きた現象を検出可能で、KAGRAでは、7億光年先で生まれた重力波も検出できる予定だという。

今まで、宇宙の様子を調べるために、可視光やX線、赤外線など、電磁波や素粒子を用いてきたが、重力波を使って宇宙を調べられるようになると、より遠い宇宙の様子を観察できるようになる。また、宇宙が始まったときのビッグバンでも重力波は発生したと考えられているため、精度を上げることで、宇宙誕生の様子が分かる可能性もある。

トンネルは今後、実験のために塗装され、2015年末から運転を始める。調整を終え、重力波を検出できるようになるのは17年ごろになるという。欧米でも同様の巨大な装置で重力波の検出を目指しているが、KAGRAの世界に先駆けた重力波検出に期待したい。(居)

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