新たに議論されている国際的な「金融規制」が、日本や世界の経済を縮小させる可能性がある。

金融規制は、「金融危機を防ぐため」として設定されてきたものだ。銀行の仕事は、企業に資金を貸し出すことだが、企業の倒産などで資金を回収できなくなった場合、銀行の資金が不足し、他の銀行に借りていた資金を返せなくなったり、顧客が預金を引き出せなくなることがある。結果、他の銀行や顧客も同じ状況に陥って、それが経済全体に連鎖すれば、金融危機になってしまう。

そうした危機を事前に防ぐため、「自己資本規制」なるものが考えられた。各銀行が資金を回収できなくても、他の業務に支障が出ないよう、ある程度の自己資金を手元に残しておくというものだ。

国際機関であるバーゼル銀行監督委員会は、金融危機が世界に広がることを防ぐためとして、「海外で業務をする銀行は、出資額の最低8%以上の自己資本を持たなければならない」と定めた。この規制は、リーマンショックなどを経ながら、次第に厳しくなっている。

そして現在、2020年頃から新たに導入される規制について議論されていると、日本経済新聞が報じた。ここで焦点となりつつあるのが、「銀行が"政府"にお金を貸す場合、自己資本は必要なのか」ということ。つまり、「国債を持つことへの自己資本規制」までかけられる可能性があるということだ。

従来、国債は「最も安全な資産」と考えられてきた。国は未来にわたる徴税権を持っており、最も信用できる機関だからだ。しかし、2010年の欧州危機でギリシャやポルトガルなどの国債の信用が失墜した。実際に、返せなくなる(デフォルトする)寸前まできたことから、「国債は安全ではない」という見方が出てきたことが、今回の議論の背景にある。

これは国際的な統一基準なので、ギリシャなど小国の国債への不安のために、日本の国債にまで規制が適用されるかもしれない。そうなればこれは不当な規制と言える。ギリシャなどのデフォルト寸前となった国債は対外債務だが、日本国債は対内債務であり、経済規模も桁違いだからだ。

また、こうした規制には別の危険が潜んでいる。国債を買うたびに一定の資金をキープしておかなければならないなら、金融機関が国債保有を避けるようになり、国債の大量売却も招きかねない。

これまで自己資本規制を定めた際にも似たような現象は起きた。一定額を手元に置かなければいけなくなった銀行は、貸し出す量を減らす。結果的に、「貸し渋り」や「貸しはがし」が発生し、生き残る可能性のあった企業が大量に倒産してしまったのだ。

そもそも銀行の仕事は、企業や産業を育てるため、リスクを取って資金を貸し出すことだ。にもかかわらず、リスクを取れないようにする規制を増やせば、企業が育たずに潰れてしまい、経済を縮小させることにつながる。

銀行の財政的安定性も、ある程度は必要だが、国債を持つために一律の自己資本の保有を義務付けるところまでいくと、「経済を発展させる」という銀行本来の使命を失わせる危険性がある。銀行は、真のバンカースピリッツを忘れてはならない。(光)

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2012年12月号記事 銀行を過度に守る金融政策の間違い

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