田村憲久厚生労働相は13日の閣議後の記者会見で、現在70歳まで繰り下げが可能となっている公的年金の受給時期を、受給者の判断で75歳まで繰り下げられるように検討する方針を明らかにした。13日付YOMIURI ONLINEが報じている。
現在、年金の受給開始は65歳から70歳まで繰り下げることが可能。受給開始を繰り下げた場合、1カ月ごとに受け取れる年金額は0.7%増え、70歳まで繰り下げれば年金額は42%増えることになる。今回の方針は、この制度を75歳までの繰り下げが選択できるようにするものだ。
田村厚労相は会見の中で、受給時期の繰り下げは「昨夏の自民党参院選公約にも入っている」としているが、自民党は2012年のマニフェストで「年金受給時期選択の弾力化など必要な見直しを行います」としつつも、昨年の選挙用マニフェストでは「年金制度などの社会保障制度について必要な見直しを行います」という表現にとどまっている。
これに対し、自民党に政策を真似され続けている幸福実現党は、2010年からマニフェストに年金制度の抜本的改革のために「75歳定年制」を明記している。自民党のマニフェストは、これとは対照的に曖昧な表現と言える。
アベノミクスの金融緩和や原発再稼働などは、いずれも幸福実現党がいち早く掲げてきた政策であり、自民党はこの数年、幸福実現党の後追いをしている状況だ。今回の「75歳繰り下げ可能案」も、世論の支持を得にくい政策だが、自民党は選挙前から正直に国民に示すべきだっただろう。
年金受給時期の繰り下げを実現するためには、高齢者の雇用を拡大する必要がある。そのためには、幸福実現党が主張してきたように、「高齢者雇用を進める企業の税制優遇」や「高齢者による起業支援」などをセットで打ち出し、75歳ぐらいまでは生きがいを持って働ける「生涯現役社会」の実現を目指すべきだ。
日本は世界で最も高齢化が進んでおり、世界に高齢化社会のモデルを発信するためにも、社会保障に頼らない政策への転換が求められる。必要最小限のセーフティーネットは構築すべきだが、国民が政府の補助を期待して働かなくなれば国家は衰退していく。
年金受給時期の繰り下げの議論も大事だが、根本的には国民の自助努力の精神を尊重し、生涯現役で働ける社会実現に向けた取り組みをすることが大切ではないだろうか。(今)
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