中国の覇権拡張に対して、日本はアジア諸国と経済面での結びつきを強めていくことが急務になっている。
政府はこのほど、インドネシアに進出する日系企業が、現地通貨ルピアで投資に必要な資金を調達できる新たな制度をつくる。4月26日付、読売新聞が報じている。
日系企業はこれまでルピア建ての長期融資を現地の邦銀から受けることができず、一旦、円やドルで借りた後、国際協力銀行などでルピアに換えて投資を行っていた。そのため、返済する際にも、配当や事業収入を再び円やドルに戻す必要があり、通貨を交換するたびに、為替レートの変動による損失が発生する恐れがあった。
だが、本制度により、日系企業は邦銀の現地支店で、直接ルピア建てで融資を受けられるようになり、道路や発電所の建設などのインフラ整備が進めやすくなる。今回のような経済連携強化の取組みは、アジア諸国との間で進めていくべきだ。
一方、中国政府は先月、アジア諸国のインフラ建設を支援する「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」の設立準備に着手したと発表した。この銀行の設立構想は、習近平国家主席と李克強首相が昨年の東南アジア歴訪時に提唱したものであり、アジアにおける投資を拡大する意思を具体的に示したものだ。
中国は他にも、ベトナムの重要な交通インフラである3つの高速道路を、共同で着工することに合意を取り付けている。また、インドネシアでは、両国政府で総額282億ドルに上る21の投資・融資プロジェクトの覚書を取り交わしているなど、中国は経済的支援によって急速に東南アジア諸国を囲いこもうとしている。
このような事態に対し、日本はASEAN諸国をはじめとするアジア諸国と連携を強化し、対中国包囲網の確立を急がなくてはならない。そのためには、やはり、アメリカを始めとする12カ国との自由貿易協定であるTPPを早期に妥結すべきだ。24日にも、日米両首脳が「自由、民主主義、法の支配など普遍的価値を共有する国々と新たなルールを作り上げる」と表明したように、TPPは中国への抑止力となる。
中国からの脅威に対してASEAN諸国は日本がアジアをリードすることを望んでいる。日本は勇断するべき時だ。
(HS政経塾 壹岐愛子)
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