鈴木真実哉
プロフィール
(すずきまみや)1954年生まれ。早稲田大学大学院を経て、現在、聖学院大学政治経済学部教授。金融論、シュンペーター、ハイエク等を研究し、「理念経済学」の確立を目指す。著書に『格差社会で日本は勝つ』(幸福の科学出版)、共著に『カオスの中の貨幣理論』(雄松堂出版)『金融入門』(昭和堂)などがある。
第二次安倍内閣発足後、約1年3カ月が経過した。安倍内閣の経済政策「アベノミクス」が、今後日本経済にどのような影響を及ぼすのかを占ってみたい。
アベノミクスは「三本の矢」から成り立っている。「三本の矢」とは、大胆な金融政策、機動的な財政政策、民間投資を喚起する成長戦略の3つの政策のことだ。
一つ目の金融政策については、日銀の黒田東彦総裁の下で、大胆な金融緩和が行われた。これは正しい政策が採られたと思う。だが、資金が潤沢に供給されてもそれだけでは経済は発展しない。経済が順調に回るために一番重要なのは、民間が投資意欲を持つことである。投資を促すために金利を引き下げているが、金利を下げるより大事なことは、将来の経済成長、今後の景気の見通しである。少々金利が高くても、今後景気が良くなっていくという見通しがあれば、お金を借りても投資に回そうと思うのだ。逆に今後の経済見通しが明るくなければ、金利をどれだけ下げてもお金を借りなくなる。
株価が上昇傾向にあるのは、円安によって輸出企業の業績が上向いていることに加え、もう一つ別の理由がある。それは、日銀がたくさんのお金を市場に供給したが、景気の見通しがいまひとつでお金を借りる人や企業が増えず、借り手のないお金が株式投資に回っていることにある。