理化学研究所の小保方晴子博士をユニットリーダーとする研究チームが1月、新型万能細胞「STAP細胞」を発見したという論文を発表した。しかし、その論文に不備があったとして、同研究所を中心に検証が行われている。

指摘されているのは、論文に使用された画像や、記載されたSTAP細胞の作製手順が、本当のものかということ。また、実験に使用されたマウスの種類に関する食い違いなどだ。

主要著者の一人である山梨大の若山照彦教授の提案もあり、論文は撤回される意向だ。しかし、同じく主要著者の米ハーバード大のチャールズ・バカンティ教授は撤回に反対している。

小保方博士に何らかの落ち度があったことは否定できない。しかし、不備の深刻さに関しては、「悪質な不正」と主張する意見、「研究者として脇が甘かっただけ」と擁護する意見とで分かれている。また、不備や撤回が「STAP細胞」の発見そのものを揺るがすのかを含め、検証はまだ途中段階だ。

いずれにせよ、この騒動をどう価値判断するべきか明らかではない。しかし、こうした中でのマスコミの報道姿勢に異常性が見られる。

そもそも、論文の不備が発見される前段階から、報道への疑問の声は挙がっていた。その多くが、研究の内容や意義ではなく、若い女性研究者であることを強調する「初恋」「おしゃれ」「巻き髪リケジョ」など関係ない報道に占められていた。

これに対して小保方博士本人も声明を出し、「小保方本人やその親族のプライバシーに関わる取材が過熱し、(中略)大変心苦しい毎日を送っております。真実でない報道もあり、その対応に翻弄され、 研究を遂行することが困難な状況になってしまいました」と報道自粛を要請している。

そうした報道姿勢は、論文への疑問が指摘されるや否や、一転して小保方博士個人への攻撃に変わった。

週刊文春は「小保方晴子さん 乱倫な研究室」「神戸の湾岸高級ホテルを自宅代わり セレブ生活の資金源」「高校時代は勝手に『彼女宣言』でトラブルも…妄想リケジョ伝説」といった記事を掲載し、プライベートや人間関係はおろか、高校時代にまで遡って人格攻撃を行った。

またアエラは記事の中で、小保方博士が女性研究者であることや、様々な苦労話が話題を呼んだことから、「自己愛が強く、自分が成功して頂点に立ち、称賛されるストーリーを確信していたのではないか」といった精神科医の声をも紹介している。しかし、上の声明からもわかるように、当初から本人は“歪んだ称賛"に迷惑していた。「子宮をなくし、子供を産めなくなった女性を救いたい」と高校時代から語ってきた小保方博士の関心は、名声ではなく研究にある。

さらに朝日新聞(電子版)はパロディーコラムで、小保方博士が「ご存じの通り、今私は八方塞がりの状態です。生き地獄です」と語り、『大人AKB48』で歌手デビューし、デビュー曲「人生切り貼りしちゃえるNO!」を発表するといった内容を掲載した。

朝日新聞はすぐさま記事を削除したが、インターネット上では「冗談では済まされない」「一線を越えている」といった声が多く挙がっている。マスコミの小保方博士批判に、社会正義とは言えない悪意があることを、多くの読者が確信したのではないか。

論文や研究への評価は確定していない。しかし、仮にどのような評価が下っても、それは研究者としての問題だ。人間関係や過去のエピソードで、ここまで過酷な人格攻撃をする理由にはならない。小保方博士は現在、ほとんど外に出られず、その家族も何日も自宅を空けているという。

今のマスコミに、「科学論文」の不備を裁く資格があるのだろうか。こうしたマスコミの報道体質や、時に週刊誌などに見られる捏造体質の方が、高度で複雑な研究論文の不備よりも、よほど悪質性があるのではないか。今回の騒動は、ジャーナリズムが「真実と正義を追究する」という使命を大きく逸脱している、ということを浮き彫りにした。

小保方博士が、こうした中傷に負けず、リバウンドして研究を進め、医療の進化と人々の幸福に貢献していくことを願いたい。(光)

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