アメリカ・デューク大学の研究チームがこのほど、音の進路を変更させ、音波で探知できなくなる「透明マント」のような装置の作製に成功したと発表した。

実験では、透明なプラスチックの板にミシン目のような穴をあけて地面と平行に層状に重ね、上に行くほど板が小さくなるピラミッド型にした。そのピラミッド内部に空間を作り、球状の物体を置くと、上から音波探知をした際に、プラスチックの板も球も"見えなく"なった。

音波探知では、ソナーから出た音が対象物に当たって跳ね返り、戻ってくるまでの時間を測る。その時間のわずかな違いで、対象物との距離や凹凸を調べることができる。

「透明マント」のピラミッドの一番上に当たった音は、普通ならばソナーに早く戻るため、「そこに出っ張りがある」と分かる。実験では、板に空けた穴の配置などを工夫して、穴の周辺で音の速度が遅くなるように調整した。このため、ソナーには、まるで真っ平らな面があるように検知される。

こうした技術は、コンサートホールの設計などで役に立つという。ホール内に柱などがあるとその周辺で音がゆがんで響いてしまうが、耐震性などの必要上、どうしても柱を作らなければならない場合に、その柱が音に影響を与えないようにできる可能性がある。

また、この技術が水中で実用化されれば、潜水艦などをソナーで発見されなくなるという、軍事応用もありうる。もちろん、まだ水中での実験は行われておらず、水中で実験するにはプラスチックでは耐久性に劣るため、別な素材を使ってのさらなる研究が必要になる。

日本の潜水艦はもともと静音性に優れており、探知されにくいが、ソナーでも見つからないとなれば、更に心強い。海に囲まれた日本としては、注目すべき研究ではないだろうか。(居)

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2011年2月2日付本欄 透明マントが実現しそう?

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