環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉でこう着状態に陥っている日米両国は、11日から2日間の日程で実務者協議を行ったが、大きな進展はなかったようだ。日本がコメなどの農産品5品の関税全廃に反対する一方、アメリカは自動車輸入関税の即時撤廃に難色を示して対立。4月に控えるオバマ大統領の訪日を前に、TPP協議は難航している。

これまで日本は、アメリカとの関税交渉を優先してきたものの、アメリカ側の譲歩を引き出せないでいた。ここにきて日本は事態打開を目指し、オーストラリアやニュージーランドなどの国々との協議を加速させ、アメリカの軟化を狙う戦術に出ている。

アメリカが譲歩できない理由は、主に国内事情にある。オバマ大統領は、すでに秋の中間選挙を意識した選挙モードに突入しており、大幅な譲歩は党内や支持者からの反発を招きかねないからだ。民主党の支持基盤である全米自動車労働組合は、かねてから日本の参加に反対し、政府に圧力を加え続けている。

もし、民主党が中間選挙に勝利できなければ、議会の上下院ともに共和党が握ることになり、大統領の指導力は低下する。ただでさえ外交政策でリーダーシップを発揮できないなかで、米議会も野党側の手に移れば、オバマ政権のレームダック化が加速することは避けられない。

すでにその兆候は表れている。中間選挙の前哨戦となる11日の米下院補選では、民主党候補が敗北した。今月初旬に行われた調査によると、オバマ大統領の支持率は、過去最低の41%を記録している。

アメリカが譲歩する可能性が薄いとすれば、むしろ日本はアメリカ以外の国を説得し、TPPを主導しなければならない。TPPは中国の覇権主義の脅威を経済面から封じ込める意味も兼ねているが、オバマ大統領の中国への弱腰姿勢は、外交だけでなく、通商分野でも際立っている。レームダック状態のオバマ大統領を動かすためにも、日本はTPPでイニシアチブを取るべきだ。(慧)

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