昨年12月、北朝鮮の金正恩体制ナンバー2だった張成沢氏が粛清され、世界を震感させた。その北朝鮮の内部を描いたドキュメンタリー映画「北朝鮮強制収容所に生まれて」が日本で公開中だ。北朝鮮の政治犯収容所で生まれ育ち、2005年に同国を脱出したシン・ドンヒョク氏(31歳)の半生が、シン氏本人や収容所の元看守という男性のインタビュー、シン氏の話をもとにしたアニメーションを交えて描かれている。
シン氏は、両親が収容されていた北朝鮮の政治犯収容所で生まれた。ここには約4万人が収容されていたという。外部と遮断されたこの施設では、公開処刑や拷問は当たり前で、シン氏は6歳から炭鉱などでの労働を強いられ、22歳の時に収容所の仲間の助けで脱出に成功した。金正日総書記の時代より、金正恩の時代の方が、状況が悪化しているという。
今年1月末に来日したシン氏は講演の中で、「収容所にいて一番辛かったのは拷問より空腹の方だった」と述べていた。また「自由ということを想像したことはなかった」とも話していた。
空腹が極限に達すると頭がおかしくなり、人肉を食べたりするといわれているが、拷問も飢餓の苦しみも多くの現代日本人には想像しがたいものだ。しかし、北朝鮮では現在でも餓死者が数万人に及んでいるといわれている。今この瞬間も、地上の地獄が展開しているのだ。
北朝鮮の内部を描いた映画に、10年に日本公開された「クロッシング」がある。02年、脱北者25人がスペイン大使館に駆け込んで、韓国への亡命に成功した事件をモチーフにして制作された。当時の韓国ノ・ムヒョン政権は脱北者問題に消極的だったといわれ、「クロッシング」は極秘裏に制作された。政権が交代した08年6月に韓国で公開、日本でも大反響になった映画だ。
こうした映画を通して非人道的な北朝鮮の実態を知ることができる。シン氏は、「多くの命が奪われてからでは遅い。他人の問題と考えないよう、国際社会に訴えたい」と話していた。
北朝鮮に拉致された日本人の多くも、いまだに帰国できないでいる。拉致された人たちの救出と、飢餓と圧政に苦しむ北朝鮮の人々の一日も早い解放を強く望みたい。(静)
映画の公開情報はこちら
http://www.u-picc.com/umarete/theater.html
(映画「北朝鮮強制収容所に生まれて」公式ホームページ)
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2014年4月号記事 「北朝鮮強制収容所に生まれて」に出演の脱北者 申東赫氏スペシャル対談 - 釈量子の志士奮迅 [拡大版]
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2014年3月1日本欄 【ファクト公開中】北朝鮮強制収容所から逃げてきた人々の衝撃の証言「THE FACT」第8回