第二次大戦中、日本国内の炭鉱などで"強制連行"されて働かされたとする中国人元労働者や遺族らが26日、損害賠償を求めて複数の日本企業を提訴する。訴訟の対象は、三菱ら旧財閥系の企業。原告団は37人で、1人あたり100万元(1700万円)の賠償と謝罪を要求している。原告団はさらに増える模様だという。
これを彷彿させるのが、昨年8月、韓国のソウル高裁が、戦時徴用訴訟で日本企業に賠償を命じた判決だ。韓国との戦時賠償問題は、日韓請求権協定で解決しているのに、国家間の取り決めをひっくり返したのだ。
今回の中国の動きは、それに"便乗"するものだろうが、韓国の問題と同じく既に解決済みである。日中共同声明を経て結ばれた「日中平和友好条約」で、中国側は戦時中の賠償請求を放棄した。その代わり日本は、巨額のODAなど経済援助を行い、中華人民共和国を「唯一の中国」として認めるとの条件を受け入れている。
北京の裁判所が訴状を受理するかは決まっていない。しかし、裁判所の決定が共産党の意思である中国において、これが受理されるということは、条約を破棄したことと同義である。中国人元労働者が戦時賠償を求めたいなら、自国に求めるのが筋である。
そもそも、"強制連行"があったかも疑わしい。確かに中国から日本に労働者を連れてきたのは事実であるが、関係のない民間人を「さらってきた」わけではない。
戦争当時、北京大使館事務所が作成した「華人労務管理要領」によれば、中国人の労働者を日本に連れてくることには反対もあったようだ。だが、中国では労働力が過剰で出稼ぎに出す必要があり、一方、日本では労働力が足りなかった。そうした状況のなか、一部の労働者を日本に連れてきたのだ。
労務者の募集や移動は、日本政府や企業ではなく、中国の労務統制機関である華北労工協会が取り仕切ったという。
日本に連れてこられた労働者は、正規の労働契約を結び、「中国で通常支払われるべき賃金を標準とし残留家族に対する送金をも考慮してこれを定めること」という配慮もされていた(華人労務者内地移入ニ関スル件・昭和17年11月27日 閣議決定)。
日本に来た労働者は、自由な募集に応じた人もいるが、捕虜も含まれていたようだ。こうしたケースでは一部自由意思に反して連れてこられた人もいるかもしれないが、それは「強制連行」とは言わないだろう。
さらに「華人労務管理要領」によれば、契約期間(およそ一年間)も決められ、これを優良な成績で完了したなら当時の金額で最高100円の賞与を与えるとしている。当時の陸軍二等兵の年俸がおよそ70円だったことから比較すれば、戦場に行くわけでもない労働者の給料としては破格だ。
「強制連行だ」と言って日本企業に賠償請求し、万が一こうした請求が認められるようなことがあれば、日本企業が中国から撤退するのは必至だ。こうした行為は自分たちの首を絞めるということを、中国はよくよく知るべきである。(悠)
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