ベルギー下院がこのほど、18歳以上にのみ認められていた安楽死に対する年齢制限を撤廃する改正法案を可決した。改正法案は上院をすでに通過しており、国王の署名がなされれば施行される。本改正法により、患者が耐えがたい肉体的苦痛を感じており、死期が近いと診断された場合、患者の自発的判断と親・医師の承認を得れば18歳以下にも安楽死が認められるようになる。年齢制限の撤廃について、賛成派は生死に関する権利を年齢で制限すべきではないと主張しているのに対し、反対派は子供の判断力について疑問を呈している。オランダでも12歳以上の安楽死が認められているが、年齢制限が撤廃されたのは今回が世界初だ。

「安楽死」とは、本人の意思に沿って医師が薬などを使って死に至らしめることである。「安楽死」は、延命治療をせずに自然の状態で死を迎える「尊厳死」とは異なり、人間の手によって強制的にその生を奪うものである。たとえ不治の病であっても、笑顔を見せたり精一杯生きたりすることで人に愛を与えて幸せにすることもできるし、その姿を見て他の人に「愛とは何か」を考えさせて人生を好転させるきっかけとなることもできる。ゆえに、この世における魂修行を阻害してしまう安楽死を安易に認め、しかもそれを若い世代にも拡大するような法律は望ましくない。

ベルギーでは75%がカトリック教徒であり、神から与えられた生命の価値を人間だけで判断してはいけないとする同宗派では安楽死が禁止されている。しかし、ベルギーでは実際に安楽死が認められ、2012年には1432件が実行されており、その数は増加する傾向にある。ここから導き出されることは、カトリックへの信仰が形骸化し、人間の魂は神仏から与えられたものであるという基本的な宗教的価値観に基づいた判断がなされなくなっているということだ。

人間は人生修行を通じて魂を磨くために、天上界からこの世に生まれてくる。たとえどのような艱難辛苦があるとしても、この世での命は神仏から与えられた尊い学びの機会なのだと言える。患者を痛みから解放するためとはいえ、真実の人生の意味を見失ってはいけないだろう。人間が神仏の眼から見て正しい判断を下していくには、霊界も含めた真実の世界観を持った宗教が必要なのだ。(齋)

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幸福の科学出版 『心と体のほんとうの関係』 大川隆法著

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2006年5月号記事 尊厳死問題から考える、笑って死ねる「往生際」

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