「画期的な脱原発の方針を聞かされたので、それに従ってロードマップを考えてみた」という、脱原発の方法について議論した一連のツイッターの内容が、あまりの「トンデモ」ぶりであったとして、ネット上で話題になっている。

「3600万人の人口削減による脱原発の完遂について」というツイッターのまとめサイトによれば、脱原発による電力の不足について「計画停電すべき」「優先順位をつけて諦めるものは諦める」と、経済を制限しようという声が上がった。また、高齢者を含む弱者切り捨てをすれば、人口が減らせて社会保障が削減できる上に、電力の消費が抑えられるのだから、脱原発は可能だという意見まで飛び出した。

これだけでも非現実的な意見だが、さらに仰天発言は続いた。原発を除いた電力需給から計算した人口の適正値は「8400万人」という怪しい"試算"まで登場。「放射能で人が死ぬのは大変だから、電力がないと生きられない人を下から順番に3600万人殺そう」と、脱原発への"ロードマップ"はグロテスクなほど具体的になっていった。これを見たネットユーザーは「(自国民の大量虐殺をした)ポルポトや毛沢東も真っ青!」「思っていても口に出せない」などと、驚きの反応を示した。

こうした一連の発言はあり得ないと思うだろうが、「人を減らそう」という成長否定の考え方自体は新しいものではない。実際に、民主党の菅直人元首相は1996年に出した著書『日本大転換』のなかで「私は、東京は将来、200万くらいの都市に再編されていくべきだと思っています」と持論を述べている。

人口の減少を望み、成長を否定するこうした「持論」は、危うく実現しかけた経緯もある。福島原発事故が起きた当時、首相だった菅氏は、原発の稼働を全て止める脱原発路線に舵を切ると同時に、放射線被害を恐れて首都圏の3000万人を避難させようとまでした。東京は危うくゴーストタウンになりかけたのだ。

だが、こうした恐れが杞憂だったのは言うまでもない。福島原発事故では現地でさえ放射線を原因とする住民の死者が出ていないほどで、距離の離れた東京が安全だったのは言わずもがなだ。「3000万人避難」というとんでもない発想は、菅氏の"本音"が思わず出たということだったのかもしれない。むしろ、原発の稼働停止の結果、節減を奨励したことで、クーラーの使用を我慢した高齢者が熱中症で死に至っている。脱原発という非現実的な政策を進めたことで、社会的弱者が命を落としているのだ。

ツイッターの議論は半ば冗談だろうが、脱原発などの文明否定の考えを突き詰めれば、確かに「人を減らせ」という極論にまで行き着くだろう。それは菅政権が半ば実証したことでもある。脱原発の行き着く先は、成長を否定し昔に戻れということと同時に、代替手段が見つかるまで我慢しろという感情論でしかない。(慧)

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