厚生労働省は26日、2012年度に各自治体が高齢者虐待に関わる相談や通報を受け、虐待と判断した件数が1万5000件超だったと発表した。前年に比べ約1400件減ったものの、高水準であることに変わりはない。

具体的には、家庭で起きた虐待1万5202件のうち、殴る蹴るなどの身体的虐待が65.0%とトップ。虐待の要因は、「介護疲れや経済的負担などが目立つ」という。介護施設の職員による虐待は155件で、要因は「教育や知識などに関する問題」が55.3%と多かった。

確かに、家庭などで介護する場合、常にそばを離れられないことは、介護者にとって大きな負担だ。しかも、介護を「労働」や「時間を拘束され、自分のしたいことができない」とだけ受け止めていては、その時間は苦痛にしかならないだろう。

しかし、同じような介護生活をしていても、それを幸福だと感じられる人もいる。幸福の科学が隔月で発行している機関紙「ザ・伝道」では、次のような事例が紹介されている。

(「ザ・伝道」HP http://www.kofuku-no-kagaku.or.jp/magazine/list/11_2009_1.html )

ある60代の女性は、突然の怪我をきっかけに寝たきりになった母親の介護で付きっきりとなった。清拭やおむつ替え、食事の用意に追われ、ふと一日の時間を見直してみると、5分と暇がない状態だったという。このままでは体力的にもストレスの面でも「死んでしまう」と思い、近所に住んでいる姉に一日だけ替わってほしいと頼んだものの、姉の反応は非協力的で不満が募っていた。

そんな日々が2年続いた頃、幸福の科学に出逢い、「人生は魂修行のためにある」「愛を与えることで人は幸福になれる」「人間は偶然に生まれるのではなく、生まれる前に両親を選んでいる」という事実を初めて知る。

「親を選んできた」と聞いて、中学生のころ母親に対して「勝手に産んだくせに!」と言ったことを思い出しながら、これまでの人生を振り返って反省を重ねていった。 すると、忙しく働く自分のために母親が食事の用意をしに来てくれたことや、頻繁に電話をかけてきたことなどが思い出されてきた。当時は煩わしく感じていたが、すべて母親の愛情だったのだと実感でき、感謝の涙が溢れてきた。そして「この介護は人に愛を与えるための修行」だと気がついたという。

それからは、生活そのものは変わらないものの、「介護そのものが大きな喜び」になっていった。そして、母親の介護がなければ、自分勝手な人生を生きていることにも気づかず、人に愛を与えることが幸福なのだということを知らずに終わっていたに違いないと語っている。

介護は単に苦しいことではなく、魂修行のための大事な機会であると気づくことで、ストレスや葛藤から解放される人がたくさんいる。

政府は「税と社会保障の一体改革」による消費増税で社会保障の予算を増額し、ヘルパーを頼みやすくするなどの支援を予定しているが、すべてがお金で解決する問題でもない。介護に関わる人が、人を愛すること、人に尽くすことの意味を知っておくことが大切だ。(居)

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2013年11月26日付本欄 「社会保障と税の一体改革」「オバマケア」は、明るい未来を拓くのか? 哲学・思想をベースに構築する新しい法学、政治学とは

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