劉氏不在のまま実施されたノーベル平和賞授賞式 (中央はノルウェー・ノーベル賞委員会のトールビョルン・ヤーグラン委員長)
(ノルウェーの首都オスロ、オスロ市庁舎 2010/12/10)

中国の民主活動家、劉暁波氏へのノーベル平和賞授賞式が12月10日、本人の欠席のなかで行われたが、この日の中国のトップニュースは気温が一気に下がったことと、北京空港の便の遅れだった。

勇気あるブロガーが、栄えある受賞者の空席の写真をネットにアップしたが、数分後に消されている。

今回の中国の反応から我々が知らなければならないことは何か。

12月13日付のニューヨーク・タイムズ紙でアンドリュー・ジェイコブス記者は、米カリフォルニア州クレアモント・マッケンナ大学の政治学者、ペイ教授のコメントを紹介している。

ペイ教授の分析によれば、今回の中国の反応をとらえて、中国の国際的イメージが落ちた点に着目する論者は、問題の本質を見抜いていない。

中国政府が脅威とするのはあくまでも13億の中国国民の意見。だが、それを左右する国外の世論が中国国内に忍び込んでくることまではコントロールできない。

それに気づいた中国政府は国際世論を、4億4千万人いる中国のネットユーザー仕様に加工しなければならなくなってきている。

今回であれば、劉氏への国民の興味をかきたてないようにしながら、ノーベル平和賞を中傷しなければならないのだ( the Nobel Prize presented propaganda officials with a daunting challenge: how to smear what many ordinary Chinese see as honor without fanning interest in Mr. Liu.

ジェイコブス記者によれば、中国政府の〝努力〟が実り、中国の大学生の85パーセントは劉氏のことも知らなければ、 劉氏らが2008年に中国共産党一党独裁 の終結、 三権分立 、人権 状況の改善などを求めた宣言文である08憲章のことも知らないという。

しかし、政府が劉氏とノーベル平和賞の存在を抹殺しようと躍起になるほど、国民はいったい何が起きているのか事の真相を知りたくなるものだ。ソフトでファイアーウォールを破る人も増えてきた。

1998年に中国で初めて野党を誕生させようとして逮捕された、米ブラウン大学の徐文立教授が同記事のなかで言っているように、

「インターネット時代に中国は、勝ち目のない戦争に挑み始めている」