日中韓を歴訪中のバイデン米副大統領が2日、安倍晋三首相と会談するために来日した。会談の話題には政府開発援助やTPPなども上がったと考えられるが、最大のテーマは中国が一方的に設定した防空識別圏の撤回要求だろう。
中国が11月23日に新たに設定した防空識別圏は日本のものと大きく重なり、日本の領空である尖閣諸島上空とも重なっている。
中国外務省の洪磊報道官は2日、国際機関などを通じて国際世論を作ろうとしている日本に対し、「日本は問題を政治化しようという下心がある」とけん制するなど、東アジアでの領海侵犯に続き、この地域の空を口先だけで実効支配しようとしている。
米軍は11月26日、この防空識別圏にB52爆撃機を発進させ、中国の一方的な宣言を認めないことを示した。
しかしその一方で、米国務省が米民間航空機に対し、防衛圏通過の際に飛行計画を中国に事前提出することを容認する報道官談話を出したため、日本政府は困惑している。また、バイデン米副大統領も朝日新聞の3日付書面インタビューで「(日中)両国が危機管理および信頼醸成の諸措置の確立で合意することの必要性」を主張するなど、実現するはずのない日中合意を取り付けるよう働きかけており、まるでアジアを中国の意向に任せるかのような動きを見せている。
そんななか、沖縄県の仲井真弘多知事は、4日の定例県議会の代表質問で、普天間米軍基地の移設先である辺野古沖の埋め立ての可否について、「地元の理解が得られない」などを理由に「辺野古移設は不可能だ」という従来の答弁を踏襲する予定だという(3日付沖縄タイムス)。
中国に防空識別圏を撤回させるためには日米が足並みをそろえることが必要であり、今、普天間基地の県外移設という選択肢はありえない。
1992年にフィリピンから米軍が引き上げた3年後、中国軍がフィリピン領を実効支配したことを忘れてはならない。アメリカが世界の警察官から降りないように、日米同盟を強化しなければならない今、日本政府は一県知事にアジアの重大事を左右させないよう、リーダーシップを発揮しなければいけない。(居)
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2013年11月28日付本欄 【そもそも解説】防空識別圏って、どんなもの?
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