世界の人口が100億人に向けて増えているが、これに伴って、解決しなければいけない問題も山積している。その1つが「食糧問題」だ。現在、世界中で飢餓や栄養失調で苦しんでいるのは約10億人以上で、実に世界の7人に1人。今回はこの問題の解決に取り組む興味深い事例を紹介したい。

まず紹介するのは、昆虫のバッタを原料とした「パワー小麦粉」だ。

現在、カナダ・モントリオール・マギル大学の研究チームが開発中で、虫を使った新しい食料が最近注目を浴びている。虫はなにより増殖するのが簡単で、同じ1kgの量を得るのに飼料も牛の4分の1で済む。また、バッタ1kgあたりのたんぱく質の量は牛肉よりも多く、「パワー小麦粉」は普通の小麦粉よりもたんぱく質を多く含んでいる。

昆虫と聞いて拒否感を持つ人もいるかもしれないが、昔から日本でも海産物が少ない内陸部では、いなごの佃煮などが食べられており、農閑期における貴重なたんぱく源となっていた。

次に紹介するのは、ミドリムシの栄養素を活用し、すでに商品化に成功し、市中に出回っている「ユーグレナ」。

これは高タンパク質で栄養価が高く、粉末にして加工できるので様々な食品に利用されている。コンビニやレストランなどでは、「ユーグレナ」入りブランドとして定着しつつある。ただ、ミドリムシを使った商品は貧困地域の人々にとってはまだまだ高価で、現段階では、食糧不足を解決するほどのインパクトを持つに至っていない

もちろん、食糧問題解決の糸口は「虫」だけではない。

Google共同創業者が研究費を出して開発したのが「人工肉」だ。これは牛から取り出した筋肉の幹細胞を培養したもので、膨大な開発費をかけて作り出された。牛の飼育数を減らして余った土地の利用度を高められるほか、牛が出すメタンガスの発生を削減することで環境問題の改善にもつなげていくそうだ。

紹介してきた事例からもわかるように、これらは既存の考え方にとらわれない発想で食糧問題に真正面から挑んでいる。こうした常識外の発想やまったく異なる角度から物事を見ることで、食糧問題のみならず、世界100億人時代に向けて出てくるであろう、様々な課題を乗り越えていきたい。人間にはそれだけの知恵や能力が与えられているはずだ。(徳)

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