政府税制調査会は8日、分科会を開き、国民一人ひとりに番号を割り振る「共通番号」の利用範囲を広げる検討に入った。9日付朝日新聞などが報じた。

「共通番号制度法」は、5月に成立し、2016年以降に導入される。共通番号は、企業が国に報告する給与の額にひも付けされ、納税申告や年金、国民健康保険などにも使用することが決まっている。

共通番号を導入することで、国民の収入をきちんと把握して必要な人に福祉が行き届くようになったり、社会保険の情報照会などのさまざまな手続きが個人向けのインターネットサービスを通じてできるようになるなどのメリットが強調されている。

そうした中で、今回の分科会に参加した井伊雅子委員(一橋大院教授)は、「共通番号は金融資産(銀行口座)や不動産などを把握するのにも使えるはずだ」と発言。これに多くの委員が賛同した。

銀行口座や不動産にまで共通番号が振られると、国は個人の資産のすべてを把握できるようになる。届け出にない収入が見つかれば、脱税で摘発することがたやすくなる。行政側のメリットは大きいが、国民にとっては管理の強化につながるだろう。

本欄でも再三指摘してきたが、これは国家社会主義に向かう動きだ。

スウェーデンでは銀行口座に共通番号が振られ、誰でも見られるようになっている。これは、脱税を互いに監視し合うためだが、こうした監視を逃れるために国外に収入源を求める動きがあるとも言われる。共通番号の成功例として紹介されることの多いスウェーデンでも、監視社会を望んでいない人は多いということだ。

共通番号はイギリスでも、テロ防止を目的に2006年に導入されたが、加入は任意であったにもかかわらず、プライバシーが侵害されるとして2010年に廃止が決まった。

現在、安倍晋三首相は共通番号について「社会保障にしか使いません」と発言しているが、政権交代が起きたら反故にされるリスクは十分にある。

政府はこうした国民の私有財産権にとって重大な案件を、積極的に周知して議論すべきだ。(居)

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