金融庁は、みずほ銀行が暴力団員など反社会的な勢力に融資を行い、それを役員らが知りながら2年以上も放置していたとして、27日、銀行法に基づく業務改善命令を出した。金融庁といえば、大ヒットドラマ「半沢直樹」で、嫌味たっぷりの金融庁の検査官が主人公を追いつめるシーンが話題を呼んだ。

現実の世界の金融庁は、ドラマ最終回の5日後にみずほ銀行にメスを入れたわけだが、そのタイミングを見れば、「半沢効果」で広がった金融庁へのマイナスイメージを払しょくするものだったようにも見える。

今回発覚したのは、みずほ銀行が系列の信販会社を通じて、暴力団員らに自動車の購入費用など230件、合計2億円以上の融資を行っていたもの。金融庁は、昨年12月からみずほ銀に行っていた定期的な検査で、この融資の実態に気づいた。

みずほ銀行が暴力団という反社会的な勢力に融資を行っていたことは改善すべきことだろうが、注目したいのは、そのタイミングだ。

7月に始まった「半沢直樹」では、第一部で、半沢とおネエ系の国税局査察部統括官・黒崎駿一との間で、ある資産の差し押さえをめぐって、激しい攻防が繰り広げられる。この闘いは、半沢に軍配が上がる。

それから一年後という設定で始まった第二部では、半沢が務めるメガバンク「東京中央銀行」に金融庁検査が行われる。ところが、その陣頭指揮を執るのが、国税局への出向を終えて金融庁に戻ってきた黒崎であり、再び半沢との間で、巨額の引当金を積むか否かで大バトルを繰り広げる。ちなみに、この闘いにおいても、半沢に軍配が上がる。

原作者やテレビ局は意図していないかもしれないが、この闘いを通じて、多くの視聴者が、金融庁という組織がいかに民間の金融機関の業務を邪魔する存在であるか、または、そもそもなぜ役人が民間企業の経営をチェックしなければいけないのか、というマイナスイメージや疑問を抱いたことは想像に難くない。

こうしたことを考えると、金融庁が今回のタイミングで、みずほ銀行というメガバンクに業務改善命令を出したことは、ドラマで広がった世間の空気を「引き締める」ために、「ドラマのようにはいかないぞ」「お上にたてつくと痛い目を見るぞ」というメッセージにも見える。

金融庁は規制ばかりして、金融機関の自由な企業活動を縛っているが、もっと銀行を自由にして、その都度起こる不祥事や問題の責任は、各銀行に取らせればいいはず。アベノミクスで勢いを見せる安倍晋三首相は、「半沢直樹」の大ヒットを機に、金融庁の存在について考え直してはいかがだろう。(格)

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