2010年9月に起きた、尖閣諸島沖で海上保安庁の巡視船に中国漁船が衝突した事件で、仙谷由人官房長官(当時)が菅直人首相(当時)の意向を受け、公務執行妨害で逮捕した中国人船長を釈放するよう法務・検察当局に働きかけていたことが、仙谷氏本人の証言で分かった。

23日付産経新聞と時事ドットコム(オンライン)が報じている。

中国人船長の釈放当時、菅・仙谷両氏は、「釈放は検察独自の判断」と強調。柳田稔法相らも検察への指揮権発動を否定していた。検察は行政機関であり、内閣の管轄下にあるため、このような案件を「独自判断」することはなかろうと思われていたが、やはり裏で指示していたようだ。

報道によると、日本国内の法律に基づいた手続きを進めるべきだと訴えていた民主党内の一部の主張に対し、仙谷氏は政治的な配慮を提起。大野桓太郎法務事務次官に対して、「政治的・外交的問題もあるので自主的に検察庁内部で(船長の)身柄を釈放することをやってもらいたい」と伝えたという。

また、横浜市でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会談を翌月に控えていたため、中国が参加を見合わせた場合、「日本のメンツがつぶれる」と焦る菅首相から、事故の解決を急ぐ指示があったという。

裏で指示をしていながら判断責任を地裁に押し付けたことも大問題だが、両氏が外交判断を根本的に誤ったことは政治家として致命的だ。中国人船長を釈放すれば、中国はおとなしくなると思ったのだろう。

しかし実際は、この判断によって「日本は強く出れば簡単に妥協する国だ」という誤ったメッセージを発信してしまった。目先のことにとらわれすぎて、日中関係を大局的に見誤ったと言える。

その結果、領海侵犯が常習化し、2012年には香港の活動家が尖閣諸島に上陸、今年9月には中国の無人飛行機が尖閣諸島北東の防空識別圏に侵入するなど、中国の挑発はますますエスカレートしてきている。

中国漁船衝突事件では、中国との外交関係は、「アメ」を与えてもむしろ「ムチ」で返されることもあることがよく分かった。トップの外交判断の重さを改めて認識すべきであり、菅・仙谷両氏のように外交判断を誤って、「日本のメンツ」をつぶさないよう求めたい。(飯)

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