駅のホームから線路に転落する事故を防ぐホームドアのさらなる普及を目指して、改良型の実験が始まっている。視覚障害者の2人に1人が線路に転落した経験があるなど、駅での事故を防ぐための対策が求められているが、ホームドアの設置に際しては、電車の扉数が車両によって異なるなどの課題がある。

西武鉄道は31日、「戸袋移動型」と呼ばれる、扉位置を変えられる高機能型ホームドアの実証実験を始めた。新所沢駅(埼玉県所沢市)に一両分だけ設置して、半年間、安全性や実用性を確認する。

扉の位置が変わっても対応できる改良型ホームドアはこの他にも、ロープやバーを渡し、乗降時には引き上げる「昇降式」がある。東急電鉄はつきみ野駅(神奈川県大和市)で、9月から約1年間、金属製ロープを用いたタイプの実験を行う。相模鉄道も弥生台駅(横浜市)で、10月から約1年間、繊維強化プラスチックでできたバーを渡すタイプを実験する。この2つは軽量のため、ホームの耐久補強も必要なく、費用が安く済むという。

3タイプとも国交省の半額補助を受けており、各社は実験後、本採用するかどうかを決める。

ホームドアのない駅は欄干のない橋のようなものだという声もあり、ホームドアの必要性は本誌が2001年から再三指摘してきた。最近ではスマホを使いながら歩く人が転落する事故も増えており、ホームドアの必要性は増している。

駅での転落による死傷事故は年間200件ほどあり、そのうち、1日の利用客が1万人を超える駅での事故が8割を超す。国土交通省のホームドアに関する検討会は2011年8月、利用客が10万人を超える駅に2016年までにホームドアを設置することを推奨した。だが、2012年9月時点で、設置駅数は該当の235駅中34駅しかない。

時間に正確な鉄道網は日本の誇る資産と言える。その安全性と利便性を高めるためにも、ホームドアが必要とされている駅への設置が、一日も早く進むことが望まれる。(居)

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2011年1月9日付本欄 本誌が提言した駅のホームドア、普及へ

http://the-liberty.com/article.php?item_id=953

2003年12月号記事 今こそホーム柵で転落事故を防げ

http://the-liberty.com/article.php?item_id=151