宇宙航空研究開発機構(JAXA)の国産ロケット「イプシロン」の打ち上げが27日に、鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所で行われる。小型・軽量・低コストと三拍子そろった新型ロケットとして注目を浴びるが、このロケットの大きな意義は「宇宙の大衆化」という点にある。

イプシロンは、全長24.4メートル、重量91トン。開発費は205億円で、打ち上げ費用は38億円だ。これに対して、これまで打ち上げてきた標準型のH2Aロケットは、全長53メートル、重さ289トン。開発費は1532億円で、打ち上げ費用は85億~120億円(24日付朝日新聞)。つまり、イプシロンはH2Aと比べて、全長が半分、重さが3分の1。開発費は7分の1で、打ち上げ費用は半分以下の小型・軽量・低コストを実現している。

さらに、これまでロケットの打ち上げと言えば、管制室に100人近くが集まって「お祭り騒ぎ」をしていたが、イプシロンはパソコン2台の「モバイル管制」を実現。管制の人員も最低2人と大幅に縮小できる次世代ロケットである。今回、イプシロンは、惑星観測衛星を乗せて飛び立つが、これは惑星を観測できる世界初の宇宙望遠鏡であり、金星や火星、木星などを観測するという。

実は、本誌では2009年春の時点で、今回のイプシロンのプロジェクトマネージャーを務める森田泰弘教授に取材を行っていた。その時、森田教授はこのロケットの意義について、次のように語っていた。

「これからは宇宙という分野も産業としてすそ野を広げていくことが必要。昔は、自転車も自動車も飛行機も限られた人しか乗れなかったが、今では当たり前のように人々の移動の足として使われています。結局、すべての乗り物はパーソナル化していく。それはロケットも同じで、私たちは、その辺の空き地からロケットを打ち上げられるような研究に着手しています。必要なのは『宇宙の大衆化』です。日本の技術を持ってすれば、30年後ぐらいまでには、毎週毎週、宇宙にロケットを飛ばすようなシステムを作り上げることはできるはずです」

歴史を振り返れば、20世紀に入るまでは、自動車も限られたお金持ちのものでしかなかった。だが、ヘンリー・フォードが大量生産方式を導入し、当時の半額以下の価格で売り出した「T型車」の登場によって多くの人々が自動車を所有する時代が訪れ、交通革命が起こり、人々の生活が一変した。

イプシロンは「宇宙の大衆化」という「革命」を起こす起爆剤となるか。新しい宇宙時代を拓くためにも、27日の打ち上げが成功することを心より願いたい。(格)

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2009年5月号本誌記事 宇宙産業で 不況をブッ飛ばせ!(森田泰弘教授インタビュー含む)

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2013年5月21日付本欄 世界で勝てる「イプシロン」ロケット打ち上げへ 未来産業への投資を

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6053