消費税増税の是非について政府が検討を進める中、各業界団体が特定の品目について「軽減税率」の実施を求める動きが活発になっている。

日本自動車工業会(会長:豊田章男・トヨタ自動車社長)は、政府が26日から開く消費税率引き上げの影響を検討する集中点検会合で、消費税増税を容認する一方、自動車取得税の引き下げを求める意向だという(23日付産経新聞)。

自動車業界は、消費税率が3%から5%に増税された1997年、新車販売台数が前年度より101万台減少するなど、大きな打撃を受けた。自工会は、取得税の減税がなければ、新車販売台数が年間93万台減少し、雇用は約27万人失われると試算しているが、なぜ消費税増税を容認するのだろうか。その背景には、消費税増税について「やむなし」と政府に理解を示し、軽減税率適用を引き出したいという思惑もちらつく。

消費税増税にともなう軽減税率については、新聞協会や日本医師会、農協など、各業界団体などが政府に適用を要望している。しかし、消費税増税であらゆる業界が大打撃を受けることは確実だ。そうであるならば、むしろ、各業界が結束して消費税増税そのものの中止こそ要望すべきだろう。

消費税増税を認めながら、軽減税率を適用するように政府に求めるのでは、自分たちの業界の利益を守ることしか考えていないことになる。しかし、仮に自動車取得税に軽減税率が適用されたとしても、消費税増税で景気が悪化すれば、国民の給料も減り、そうすれば自動車を買う余裕がなくなるのは当たり前だろう。日本経済がガタガタになってしまえば、各企業は大きな損害を被る。

多くの企業が自由に切磋琢磨して、よりよい商品やサービスを提供し、消費者が便利で豊かな社会に暮らせるようにすることこそ、資本主義の目指すところだろう。「政府の顔色を伺いながら、自分の業界だけ軽減税率を認めてもらおう」というのは、政府におもねる「おねだり思考」であり、自由主義経済の考え方とは相容れない。

消費税率引き上げで政府に協力するのは、軽減税率の適用いかんにかかわらず、日本経済を破滅させ、自分で自分の首を締めることになる。自由な企業活動と、国民の便利で豊かな暮らしをこそ目指さなければならない。経済界は、消費税増税を既定路線とする政府・財務省の言いなりになることなく、一致団結して消費税増税に異を唱えるべきだ。(晴)

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