これまで、他人の臓器を移植するしか治す方法がなかった難病を、自分の細胞から培養した臓器を使って治療できる日が近づいてきた。ヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)を使った、さまざまな実験の成果の発表が相次いでいる。

iPS細胞とは、皮膚などの細胞を操作して「初期化」したもので、まるで受精卵の細胞のように振る舞う。同じiPS細胞が、血液や骨、心臓などの細胞に分化するため、基本的に体の中のどんな臓器も作ることができる。

この ヒトiPS細胞を世界で初めて開発した京都大学の山中伸弥教授は、2012年にノーベル生理学・医学賞を受賞。現在は、他人の細胞を使っても拒絶反応の起きにくい、安全性の高いiPS細胞を備蓄する計画を進めている。

理化学研究所やニコンなどが、このiPS細胞から細胞シートを量産する計画もあり、まずは目の老化に伴う病気のひとつ、加齢黄斑変性を治療するための実用化を目指している。量産することで、一人当たりの治療費を現在の見込みである1000万円から、100万円まで下げられるという。2020年代初めには実際に使われる予定という。(15日付日経新聞)

日本ではこの他にも、東京大学の研究チームが世界で初めてブタの膝関節を再生する実験に成功したり、動物を使ってヒトの血液や、3Dプリンタを利用して耳を作る研究も始まっている。こうしたiPS細胞を用いた再生医療の世界市場について、経済産業省は、2030年に17兆円規模になると見ている。

海外でも研究は進んでおり、アメリカの研究チームが心臓の細胞への分化に成功したことは特筆すべきだろう。

ピッツバーグ大学の研究チームはこのほど、ヒトのiPS細胞から作った心臓前駆細胞をマウスの心臓に移植して心筋に分化させ、1分間に40~50回収縮するまで育てる実験に成功したと発表。レイ・ヤン上級研究員はAFPの取材に対し、実用化の時期はまだ遠いが、この技術を応用して心臓発作で傷んだ組織片と取り換えたり、心臓全体の移植の可能性もありえると語っている。

iPS細胞を用いた臓器移植が実用化されたときの最大の功績は、脳死移植の必要がなくなることだ。

本欄でも報じてきたとおり、脳死は人の本当の死ではない。心臓が停止してから約24時間後、魂と肉体をつなぐ霊子線(シルバーコード)が切れるときに、人は本当の意味での死を迎える。それまでは、たとえ肉体に生体反応がなかったとしても、肉体が損傷すれば本人の魂は痛みを感じる。

そんなときに、脳死判定で勝手に死んだと決めつけ、臓器を取り出すなどしたら、死者の魂は非常な痛みと恐怖を覚え、安らかなあの世への旅立ちを妨げられてしまう。また、移植を受けた人にも憑依現象が起こるなど、ある種の地獄を生み出すことになる。iPS細胞による再生医療が進めば、そうした脳死移植にまつわる悲劇をなくすことができる。一刻も早い実用化を期待したい。(居)

【関連書籍】

幸福の科学出版 『復活の法』 大川隆法著

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2013年7月7日付本欄 来年から世界初のiPS細胞の臨床研究 バイオ銘柄にも注目

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2012年12月号記事 iPS細胞で脳死臓器移植を不要に 山中教授がノーベル賞を受賞 - Newsダイジェスト

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