記録的な猛暑によって、原子力発電所を動かし、電力を安定的に供給しなければいけないという事実が浮き彫りになっている。

その要因として、まず、熱中症により病院に搬送される人が急増していることがあげられる。5月下旬から8月中旬までに、日本全国で熱中症による病院搬送は約4万人。7月だけでも2万3000人を超えた。このうち48.2%と半数近くが65歳以上の高齢者で、高齢者の熱中症死も続出。特に、室内でエアコンを使わないで死亡したケースが多いという。

また、原発の稼働停止による電力供給のひっ迫も大きな問題となっている。政府の節電要請が始まった7月から今月14日までの間、関西電力管内では、電力使用率が90%を超えたのは15日間。そのうち2日間は95%に達した。

この状況で、唯一稼働していた関西電力の大飯原子力発電所3、4号機(福井県)が、9月から定期検査に入る。これによって日本国内で稼働する原発は再びゼロになり、関電の供給電力は、ピーク時の約1割に相当する計236万キロワット減ることになる。

経済産業省は「9月は需要が低下するため、電力需給は問題ない」としているが、2003年には関西電力管内で、9月に夏季の最大電力の1位、2位を記録したこともある。そのため、残暑の電力需給は大きな懸念となっている。

原発が止まった今、日本の電力の大部分を火力発電でまかなっている。しかしその火力発電もまた、大きな問題を抱えている。

原発の稼働停止により火力発電所を酷使する状態が続いており、今夏、関電では全31基の火力発電がフル稼働。今年度はトラブル停止がすでに7件起きている。また特例で、火力発電に対する定期点検は繰り延ばしされており、その影響で10月以降に計6基の火力発電(計338万キロワット)が点検のため、一気に停止する予定だ。大きな不具合が見つかった場合は、点検が長期化する可能性もあり、冬の電力供給が危ぶまれる。

さらに、原油の国際価格の上昇も懸念されている。中東のエジプトの混乱が長期化し、衝突が全土に拡大した場合、スエズ運河やパイプラインの原油輸送に影響が出る。すでに原油価格が上昇しており、エネルギー資源を輸入に頼っている日本にとっては大きな痛手となっている。

記録的な猛暑、熱中症での救急搬送の増加、綱渡りの電力供給、火力発電への依存、そして、火力発電に必要な原油の高騰と産油地域の政情不安。福島第一原発の放射線で死んだ人はいまだにゼロということを考えても、日本政府は早期に原発を動かさなければならない。(飯)

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