日本は23日、環太平洋経済連携協定(TPP)の交渉会合に正式に参加した。マレーシアで開催中の同会合では、24日から25日にかけて、すでに交渉に参加している11カ国と日本との集中討議が行われる。

今後、政府は、これまでのTPP交渉会合における文書を解析し、農産品保護を目指す国内の反対派とも調整を行うとみられる。そのなかで、TPP参加を推進したい安倍晋三首相ら政府側が、いかに自民党内の反対派を説得するかは大きな課題となるだろう。

参院選で自民党は圧勝したが、TPPに関して公約では「守るべきものは守り、攻めるべきものは攻め、国益にかなう最善の道を追求する」と書くにとどまった。その背景には、党内のTPP反対派を抑えきれていない現状がある。

例えば、参院選で比例第二位で当選した山田俊男氏は全国農業協同組合中央会(JA全中)出身。TPP交渉に関しては「納得できない交渉結果なら脱退を求める」と、産経新聞のインタビューで述べている(23日付MSN産経ニュース)。自民党は、TPP反対を主張する農業関係の団体からの支援を受けているため、TPP参加を明確に打ち出せないでいるのだ。

TPP交渉参加をめぐっては農業分野のマイナスばかりが議論されがちだが、日本がTPPに参加することによる国益も大きい。

たとえば、TPP参加で日本のGDPは3兆2000億円増えると試算されている。加盟国全体で世界のGDPの4割を占めており、今後の成長が期待できる国も多いため、日本にとっても、さらなる成長のチャンスになることが期待できる。また、TPP参加を通して日本がアメリカや環太平洋・アジア各国との経済的なつながりを深めると、中国に対する牽制にもなる。安全保障の面でも、TPP参加には重要な意味があるのだ。

結局、自民党内の反対勢力は、利益誘導を主眼に置く旧来型の自民党政治を続けているように見える。しかし、彼らがTPP参加を妨害すれば、実は「経済成長の可能性」や「安全保障の強化」といった、大きな国益を失わせかねないのだ。

民主党をはじめ、野党が壊滅状態になった今、安倍自民党が戦うべき相手は野党ではなく、党内の反対勢力となっている。TPP参加に限らず国防問題なども同様だが、国際的な視野に立って国益を守ることができる本当の保守政党に変われなければ、参院選の圧勝も自民党の「終わりの始まり」となりかねない。(晴)

【関連記事】

2013年7月23日付本欄 成長戦略でこれから農業・医療の規制改革に踏み込むとは、自民の詐欺か?

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6383

2013年6月21日付本欄 自民の参院選公約は安全運転 言うべきことを言う正々堂々の政治を

http://the-liberty.com/article.php?item_id=6202