防衛省が自衛隊の最高指揮官となっている統合幕僚長の下に「統合司令官」を置き、陸海空や統合幕僚監部の指揮に専念する役割を担わせる方針であることを各紙が報じている。
そもそも世界の各国でも陸海空などの各軍種の統合運用は長年の大きな課題だ。陸軍と海軍、陸軍と海兵隊、海軍と空軍は、よく言えばライバル、悪く言えば相性の悪い組織同士の組み合わせだ。
民間企業などと比較にならない大規模で広範囲な「運用」をしなければならないのだから、統合指揮できる指揮官やその幕僚組織が必要になるのは、当然のことではある。
今回の「統合司令官」構想は、2006年、以前は陸海空の3自衛隊の最高会議の議長に過ぎなかった統合幕僚議長に代わって、指揮権を持つ統合幕僚長とそれを補佐する統合幕僚監部を設置したが、これだけでは限界があるとして打ち出されたものだ。その限界は、2011年の東日本大震災の対応や、中国・北朝鮮などへの対処で明らかになってきている。
中国の軍拡に対処するためには、島嶼防衛での即応体制強化や、航空・宇宙戦能力やサイバー戦能力の増強にも努めなければならない。
今月、日米両国の海軍などが米国ロサンゼルス近郊で大規模な離島奪還訓練を行った際には統合幕僚副長が日本側指揮官となり訓練部隊を指揮した。「統合指揮官」構想は、陸海空の方面隊などに任せてきた「地方分散型」の指揮権を積極的に一元化する取り組みで、日本も米軍に近い部隊指揮を行えるようにするものだ。
さらなる国防力強化のためには、対テロや対ゲリラ、対特殊部隊など様々な脅威に対応できる統合組織や統合部隊を常時設置することも必要だろう。陸海空の組織の壁を乗り越える不断のイノベーションが求められる。(弥)
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