オバマ大統領は19日、ドイツのベルリンで演説し、現在米露が保有する戦略核の3分の1を削減する方針を表明した。
これを実施すると、米露の核弾頭は約1000発にまで削減されることになる。2011年に米露間で発効した新戦略兵器削減条約(新START)では、配備済みの戦略核弾頭を2021年までに両国とも1550発まで削減することで合意していたが、これをさらに踏み込んで進めることを意味する。
ただ、オバマ大統領が掲げた戦略核削減目標の実現には、ロシアの合意が不可欠であり、アメリカが欧州に配備しているミサイル防衛システム(MD)についての意見が米露間で以前から異なるため、ロシア側がこの目標に応じるかは不明だ。
オバマ大統領が自らの信念である「核なき世界」の実現をベルリンのブランデンブルク門前で訴えたのには、歴史的な背景がある。
冷戦体制下の1963年6月23日、同じ場所でケネディ大統領が演説を行った。ベルリンが東西に分断され、ベルリンの壁が築かれていたことに対してケネディ大統領は、「一人の自由主義者として、私は『私はベルリン市民である』という言葉をとても誇りを覚えます。(As a free man, I take a pride in the words "Ich bin ein Berliner.")」と述べて、西ベルリンに対するアメリカの決意の強さを表して西ベルリン市民を励ますとともに、ソ連を牽制した。
また、1987年6月にはレーガン大統領が同場所で演説し、自由主義を訴えるとともに、核軍縮についても言及している。
オバマ大統領は今回の戦略核削減により、米ソの冷戦体制の余韻を断とうとしているようだが、オバマ大統領が、自由主義の旗手であるアメリカの大統領として冷戦体制を本気で終結させたいのであれば、 "世界で最後の冷戦地帯"と言われている東アジアに目をつぶってはならない。中国はすでにアメリカのワシントンなど東海岸を射程に収める大陸間弾道弾(ICBM)を保有しており、北朝鮮も明確にアメリカに届く核ミサイルを製造していることはすでにわかっているのだ。
また、オバマ大統領が本気で「核なき世界」を実現したいのであれば、6月7、8日に開催された米中首脳会談で、習近平国家主席に対して中国の戦略核兵器の削減を迫るべきだっただろう。オバマ大統領は「核なき世界」を訴えてノーベル平和賞を受賞したが、米露が核削減し、中国と北朝鮮の核を削減しなければ、中国、北朝鮮の「核大国化」をゆるし、世界の危機を逆に増大させることになる。東アジアの平和の実現を目指してこそ、真の受賞者と言えるだろう。(飯)
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