米ホワイトハウスは13日、内戦が続くシリアで、アサド政権が反政府軍に対してサリンをはじめとする化学兵器を使用した証拠をつかんだと宣言。これまでアメリカは反政府軍に対して、医薬品など殺傷力のない物資で支援していたが、今後、軍事支援もする方針を示した。15日付各紙が報じた。

シリア内戦のきっかけは、アラブの春の一つとして起きたデモだった。シリア政府は2011年3月、デモ隊を攻撃。以来、反政府勢力を2年で少なくとも9万人殺害し、周辺各国へのシリア難民は160万人にも上るとされる。国連をはじめとして、各国はシリア政府によるデモ弾圧を繰り返し非難したが、直接的な介入は行われず、被害は拡大し続けている。

ローズ米大統領副補佐官は13日、今年3、4月にアレッポ郊外、5月にホムス北方と首都ダマスカス東部での攻撃に、化学兵器が使用されたと発表した。オバマ米大統領は、大量殺戮兵器である化学兵器の使用を「レッドライン(超えてはいけない一線)」としており、それを超えたら「事態は一変する」と話していた。

米メディアは武器供与の内容について、小火器や弾薬などを数週間以内に届けるなどと詳しく報じているが、米政府は語っていない。その理由として、実際の武器供与には2つの障害があることが挙げられる。1つは、ロシアがアサド政権側を支持しており、欧米が求めるアサド大統領を除いた新政府樹立を支持していないこと。2つ目は、反政府軍にイスラム過激派が介入しており、供与した武器がテロ組織に流れる恐れがあることだという。

アメリカは、17日に始まる主要国首脳会議(G8)でロシアを説得するため、直前のこのタイミングで声明を出したという見方もある。

オバマ大統領は米地上軍のシリア派兵を否定しているが、オバマ政権の外交方針が転換すると見る向きもある。

7月に安全保障担当大統領補佐官に就任するスーザン・ライス氏は、前任のドニロン氏と異なり、介入に積極的だ。クリントン政権高官だった彼女は、1994年のルワンダ虐殺に対し手をこまねいたことに、「同じような危機に再び直面したら、劇的な行動に賛成すると誓った」と語っており、実際に2011年には、オバマ政権高官としてリビア空爆を実現させた。

ライス氏は人道的立場から介入を主張するが、議会からは「軍事関与を渋れば、同盟国の米国に対する信頼も揺らぐ」と、介入しないことへのリスクを指摘する声も上がっている。

武器供与にとどまらず、米軍派兵を含めて「世界の警察官」としての機能復活が望まれるところだ。(居)

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