アメリカの国家安全保障局(NSA)が通信記録などの個人情報を収集していることをリークした元CIA職員のエドワード・スノーデン氏が、中国の工作に協力しているのではないかという疑惑が浮上している。

下院の情報特別委員会は13日、非公開でNSAのアレキサンダー局長からスノーデン氏のリークに関して事情を聴いた。その後会見を行ったロジャーズ委員長は、スノーデン氏に関して「リークした動機や香港に行った理由、どうやって生活を維持しているのか、中国政府が完全に協力していることなのか、多くの質問をする必要がある」と発言した。

スノーデン氏のリークについては怪しい点が多いが、その一つはリークのタイミングだ。同氏の情報提供に基づいて英ガーディアン紙が米政府の極秘情報収集に関して報じたのは米中首脳会談の直前の6日だった。オバマ米大統領が首脳会談で議題に上げるなど、サイバー攻撃は米中間の外交問題になっているが、アメリカが中国を一方的に非難することはこのリークによって今後難しくなるであろう。

また、スノーデン氏が香港に滞在していることも疑惑を深める要素の一つだ。同氏はその理由として「言論の自由と政治的反対者の権利を守る気風が強い」ことを挙げている上、今回リークを行った理由として、「米連邦政府が世界中の人々のプライバシーやインターネットの自由を破壊するのは許せなかったから」と語っている。しかし香港では、中国当局の諜報活動が盛んに行われているほか、海外に出た民主活動家が帰国できなくなっているなど、言論の自由や政治的自由が蝕まれ始めている。スノーデン氏は、香港がアメリカよりも自由であると本気で考えているのだろうか。

さらにスノーデン氏は首脳会談後、香港のサウスチャイナ・モーニングポスト紙(13日付)に対し、アメリカは中国本土や香港の個人や団体も対象に同種の情報収集をしているなどと、中国に有利な情報を語った。同日、中国外務省の報道局長は「我々は『中国もサイバー攻撃とハッカー行為の被害者だ』と繰り返し表明してきた」と、サイバー攻撃で中国を批判してきたアメリカを当てこすった。あたかも中国がスノーデン氏に発言させたかのような印象を与える出来事だ。

もし本当にスノーデン氏が中国に利用されているならば、中国は彼のリークを通じてアメリカに揺さぶりをかけている恐れもあるだろう。中国は、実際の軍拡はもちろん、スパイ活動やサイバー攻撃など、あらゆる方法を使ってアメリカを引きずり下ろそうとしており、工作活動への警戒が必要だ。「中国がアメリカを凌駕して世界の覇権を握るなど非現実的」という意見もあるが、注意を怠ってはならないだろう。(晴)

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