政府は12日にまとめた成長戦略の最終案に、「投資減税」で企業の生産設備の更新を促す策を追加した。これまで安倍晋三首相が3回の講演で発表した成長戦略が「踏み込み不足」であるとの批判を受けたもの。しかし、産業界が期待していた「法人税率の引き下げ」や「企業の農地所有」などには踏み込まないままとなった。

成長戦略案は「日本再興戦略」と題され、副題には、2月の訪米時に安倍首相がシンクタンクで行った演説のタイトルになぞらえてか「ジャパン・イズ・バック」とある。しかし、発表翌日の13日の株式市場は1万3千円台を割り、日銀が異次元緩和をすると発表した4月以来の株価に「バック」してしまった。株価の下落に対応して政策を修正しているものの、市場の期待はどんどん離れている。

今回の案は、法人実効税率の引き下げを先送りしている。麻生太郎財務相は7割の企業が赤字を理由に法人税を納めていない現状から、「(法人税率引き下げが景気対策に)今すぐ効果があるとは思えない」と説明しているが、国際的に見ても日本の法人税は高い。減税によって企業活動が活発になれば、法人税を納める黒字企業を増やす余地も十分にある。結果、かえって税収が増えるだろう。

また、成長戦略では規制改革特区を設置するが、具体策をまとめるにあたって各省庁がなかなか権限を手放さず、企業参入は前途多難のようだ。農水省は土地売買の自由化促進に反対。公立学校の民間委託については文科省が反対で、「カリキュラムづくりは公権力の行使だ」としている。これらは特区での取り組みが成功すれば全国展開することになるが、やはり既得権益にメスを入れる力が弱い。

アベノミクスによる金融緩和で景気回復の兆しが見えてきても、企業活動が自由にならなければ経済成長の達成は困難だ。各省庁のしがらみにとらわれ、民間の活力を解放することが難しい自民党政治の限界が見えてきた。(晴)

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