経済協力開発機構(OECD)は29日に発表した経済見通しで、日本の2013年の成長率見通しを前年比1.6%増とした。昨年の11月時点で0.7%増だった予測から、大幅に上方修正された。「経済成長」を前面に押し出している安倍政権と日銀の経済政策が評価された模様だ。

しかし、安倍政権内に「経済成長と財政健全化の両立」を目指す動きが出始めている点は気になるところである。

28日に開かれた政府の経済財政諮問会議は、安倍政権の経済財政運営の指針となる「骨太の方針」について議論した。会議では、アベノミクスの「三本の矢」に続き、「第四の矢」として財政健全化に取り組む方針を確認しており、安倍晋三首相も、「持続的成長と財政健全化の双方の実現に取り組むことが重要」(28日付ロイター)と発言している。

しかし現実には、経済成長が不十分にもかかわらず、緊縮財政や増税を行えば、企業や国民の所得は減り、結局、税収も減ってしまう。

それにもかかわらず、財務相の諮問機関である「財政制度等審議会」は、「国の財政が悪化すると金利が上昇し、民間投資が滞って景気が悪くなる」とし、財政健全化を求める報告書を27日に麻生太郎財務相に提出している。この報告書は、「骨太の方針」に反映される見込みだ。

折しも30日の日経平均株価の終値は、24日の「1134円安」という記録的な下落に続き、前日比で「737円安」となった。直接の原因は、円高の進行やアメリカの株安などと報じられているが(30日付時事ドットコム)、安倍政権が「財政健全化」に傾き始めていることが投資家心理を冷やしている可能性もあるだろう。

そもそも、この半年間の株高は、「日本は景気回復する」という国内外の投資家の期待を反映したものである。安倍政権は景気回復が期待だけに終わらないように、着実な経済成長路線を固める必要があるのだ。これは日本だけでなく、世界経済にとっても必要とされていることである。

OECDは同じく29日の経済見通しで、今年の中国の成長率を7.8%とし、従来予想の8.5%から下方修正した。また、米連邦準備理事会(FRB)のバーナンキ議長が量的金融緩和の縮小を示唆したことでアメリカの景気の先行きに不安感が出ており、財政問題を抱えるヨーロッパも経済の見通しは不透明だ。世界経済が強力な成長センターを欠いている中で、積極的な経済成長路線を進める日本に対する期待は大きいと言える。

日本にとっては、実体経済においても「期待」にとどまらない力強い経済成長を成し遂げれば、世界経済のリーダーとなれるチャンスが来ている。現時点で日本が力を入れるべきは、財政健全化ではなく、やはり経済成長である。(晴)

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