一党独裁体制に不満を抑えきれない中国国民が増える一方、中国政府による国内の締め付けが強まっている。

重慶の市民7人が28日、北京のアメリカ大使館前に現れ、地方政府による強制立ち退きや暴行などの実情を訴え、訪中しているドニロン米補佐官に直訴の手紙を渡そうと試みた。しかし、彼らは私服警官に逮捕され、バスに乗せられ、運ばれてしまったという。(29日付産経)

また、同日、化学工場に対する反対デモを封じこめようと躍起になっている雲南省昆明市当局が、市民がスローガンを書いてデモに参加することを防ぐため、白いTシャツを購入した人に店側に実名を申告することを義務付けた。少し前には、デモの参加者がマスクにメッセージを書いて抗議したため、マスクを売る店に、実名の記録を義務付けたが、市民からの批判を受けて撤回したばかりだったという。(29日付東京新聞)

こうした報道を見るにつけ、中国政府が、いかに人々の自由というものを軽く考え、簡単に奪ってしまうかが分かる。ノーベル平和賞を受賞した劉暁波氏は、複数政党や三権分立の必要性などを主張しただけで刑務所に送られ、いまだに出てこれないでいる。

また、昨年4月、軟禁されていた自宅から脱出してアメリカに亡命した盲目の人権活動家・陳光誠さんが、長年、自由を奪われていた理由は、一人っ子政策のために強制的に行う人工妊娠中絶などは止めるべきだと主張しただけだ。

こうした当たり前のことを主張しただけで捕まってしまうのが今の中国なのである。現在、中国では、デモや暴動の数が年間20万件にも及ぶと言われており、近年では、軍事費よりも国内向けの治安維持費が高くなっている現状もある。国民の不満は爆発寸前なのではないか。

習近平・国家主席は、政権発足以来、対日強硬姿勢を強めているが、こうした国内の不満をそらすために、日本を槍玉にあげているという点も見逃せない。だが本当に国民の幸せを考えるのであれば、統制や抑圧を強めるのではなく、国民が自由を享受できる社会を目指すべきだ。

「中国の夢」をスローガンに掲げる習氏だが、その夢が国民を恐怖で支配し、周辺国を侵すものであれば、自由主義国は力を合わせ、徹底してその夢を打ち砕かなければならない。それが、中国の人々をも幸せに導くはずだ。(徳)

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