「彼らがあきらめないから、私もあきらめません」。18日付英字紙インターナショナル・ヘラルド・トリビューンは、一昨年亡くなったアップル社のスティーブ・ジョブズ氏の夫人、ロレーヌ・パウェル・ジョブズ女史の慈善活動を伝えている。冒頭の言葉は彼女が、ある慈善活動(後述)について話したもの。2回に分けて抜粋紹介。

  • 少女マーリーンは大学受験の準備期間中、背の高いブロンド女性と数週間に一度会い、子供時代のつらい話を聴いてもらったりEメールを交換したりした。マーリーンは家族の中で初めて大学に進んだが、女性の支援なしには無理だったろう。大学生になったマーリーンはニュースで見て初めて、女性がシリコンバレーの"王族"でS・ジョブズの妻ロレーヌであると知った。マーリーンは言う。「彼女は全然偉ぶらない(humble)人なので、正体を知って感謝が10倍深まりました」
  • 知人によれば、これは非常にロレーヌらしいエピソードだ。彼女は有名人だが目立つことを避け、自分が設立に寄与した大学入試準備支援機関の活動に打ち込んできた。だが夫の死後2年経たずして表に出て来つつあり、地球環境保全、貧困層の栄養状態改善、移民政策、銃規制などにも取り組み始めた。
  • ロレーヌの20年越しの友人で、スタンフォード大学で慈善事業の講義をしている女性は言う。「彼女が慈善に投資した金額のうち、世間に知られているのは全体の1パーセント程度でしょう。私の口からはそれ以上言えません」
  • ロレーヌの財産額は全世界の女性中、第9位。彼女はあるインタビューで「知識とネットワークと人間関係を駆使して、最大量の幸福(the greatest amount of good)をもたらしたい」と話している。夫ジョブズ氏は寄付行為が少ないと批判されたが、少なくとも一度は匿名で病院に巨額の寄付をしたとの噂もある。

ライバルのビル・ゲイツ夫妻は財団をつくって大々的に慈善を展開しているが、ジョブズ夫妻は目立たない慈善を好んできたようだ。両者とも仕事で得た巨富を慈善に投じることは当然と考えているようで、アメリカにおける寄付文化の定着ぶりが伺える。(司、後編に続く)

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