首相として10年ぶりにロシアを公式訪問した安倍晋三首相は29日、プーチン大統領と会談した。両首脳は平和条約交渉を再開することで合意したほか、極東開発における協力拡大でも合意。平和条約交渉についてプーチン大統領は、「経済協力がもっとも良い役割を果たすと思う」とコメントし、北方領土問題の解決についても前向きな姿勢を示した。

今回の会談で特に注目したいのは、ロシア側の呼びかけで、外務・防衛担当閣僚の安全保障協議委員会(2プラス2)の立ち上げが決まったことだ。日本が2プラス2を設置するのは、米・豪に続いて3カ国目であり、同盟国以外とは初めてである。今後は、自衛隊とロシア軍の協力や、定期協議を行う。日本の外務省とロシア安全保障会議事務局とが定期的に協議を行うことも決まった。

ロシアはこれまで日本に対し、極東地域への進出や経済協力を呼びかけてきた。その背景には、中国からロシア極東地域への急激な人口移動が、安全保障上の脅威になっていることがある。

中国との国境にあたる極東地域の人口は約600万人だが、開発の遅れで、モスクワなど大都市への人口流出が続いている。一方、ロシアと国境を接する中国の三省の人口は約1億人。ロシア極東地域で働く中国人は10万人以上、不法滞在者を含めば数百万人になるとみられており、極東地域の「中国化」が危険視されている。また、中国はオホーツク海や北極海にも進出を始めており、制海権や資源開発などの面でロシアと対立する可能性も危ぶまれている。

日露関係が進展すれば、双方にとって、中国に対する牽制になる。日本はまず、ロシア極東地域のエネルギー開発やインフラ整備などで協力を進めることが重要だ。将来的には、アメリカに配慮しつつ、日本がロシアと宇宙開発分野で協力する選択肢もある。

日本はフィリピンやベトナムなど、中国との間で領土問題を抱える国々との防衛協力を進めてきた。5月下旬にインドのシン首相が来日する際の首脳会談では、安全保障分野の協力や経済協力について話し合う予定だ。日本とロシアの協力が深まることは、このような中国包囲網づくりの一環であり、中国の台頭を警戒するアジア諸国にとっても重要だ。(晴)

【参考書籍】

幸福の科学出版HP 『ロシア・プーチン新大統領と帝国の未来』 大川隆法著

https://www.irhpress.co.jp/products/detail.php?product_id=728

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