安倍晋三首相は29日、ロシアを訪問し、モスクワでプーチン大統領と首脳会談をした。安倍首相は出発前に「平和条約交渉の再スタートとなる訪問」「私自身がトップセールスする経済外交の第一弾にしたい」と語っていた。首相がロシアに売ろうとしているのは、日本が世界に誇る先端がん治療の病院だ。

今回初めて、政府と民間企業が協力して病院を輸出する。ロシア側には30日に計画を表明する。計画では、ロシアと共同で新病院「日ロ先端医療センター」を建設し、そこにがん治療のための「ホウ素中性子捕捉療法(BNCT)」の設備を導入する。この療法では日本の技術が最先端だ。日本の官民共同の組織であるメディカル・エクセレンス・ジャパンが病院を運営し、病院には日本人医師も勤務する。治療費は一人当たり300万円程度となる。

病院は2015年から稼働する予定で、それまではロシア人患者を日本の57の連携病院に招いて治療する。

ロシアでは今、新しいがん治療の施設が求められている。ロシア人の死亡理由で1番目に多いのは循環器系の病気だが、2番目はがんで、その割合は14%にもなる。ロシアにもがん治療の施設はあるが、設備が古く費用は高い。そのため、ロシア人はこれまでも日本の病院に治療を受けに来ており、日本の医療機器や治療の腕、ホスピタリティが高く評価されてきた。日本に渡航して治療を受ける費用とロシア国内での費用がほとんど変わらない上に、日本で受ける治療の方が満足度は高いのだという。

体力に無理を強いて日本に治療に来ていたロシアのがん患者にとって、同じ治療を国内で受けられるようになるのは朗報だ。今後、「日本産の病院」の認知度や信用が増していけば、同様の施設が各地でつくられるだろう。それは、そこに日本の機器が導入され、日本の医療産業の輸出先が増えることでもある。

今回の病院の輸出は日本にとって、医療が輸出産業として活性化するかの試金石となる。大いに期待したい。(居)

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