三菱重工業と仏原子力大手アレバの企業連合は、トルコで日本政府の支援を受けて原発を建設する。安倍晋三首相は、5月上旬にトルコを訪問し、エルドアン首相と大筋合意する。安倍首相は、自らが動くことで、原発を輸出するという政府の方針をアピールする。福島原発事故後初めて、官民一体で原発を受注することになる。読売新聞などが報じた。

トルコは、黒海に面する都市シノップに、100キロワット級の原発を4基建設する。建設費は約2兆円で、2020年ごろに稼働する予定だ。

トルコはもともと、日本の原発を高く評価していた。トルコと同じく地震の多い国である日本は、耐震性の高い原発を作る技術を持つからだ。そのため原発建設の交渉は当初、日本が優勢だったが、福島原発事故後、民主党政権が国内での「原発ゼロ」を打ち出したため交渉が停滞。その間、ロシアや韓国などの首相や大統領がトルコに対しトップセールスをかけていた。トルコが日本の原発に積極的になったのは、昨年12月に日本で政権交代がおき、日本政府が脱原発政策を見直したためだ。

日本の原発を導入する動きはトルコだけではない。

アラブ首長国連邦(UAE)も5月に安倍首相が訪問する際、原発の輸入に欠かせない原子力協定を日本と結ぶ。UAEは2021年までに電力の最大25%分を原発で賄い、火力発電への依存度を下げて、その分の石油を輸出に回すという。

また、すでに日立製作所が優先交渉権を得ているリトアニアでは、原発建設計画が昨年10月の国民投票で否決されてしまったが、ブトケビチュス首相は計画の継続を目指すという。ロシアに依存している電力の自給が狙いだ。

日本エネルギー経済研究所の見積もりでは、世界の原発の発電量は2035年までに、新興国を中心に1.8億キロワット分も増えるという。100万キロワット級の原発に換算すると180基分にもなる。つまり、日本の原発を売る余地はまだまだあるということだ。5月の連休にロシアや中東を4カ国歴訪する安倍首相には、この調子で売り込んでほしいものである。(居)

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