造船・重機大手の川崎重工と三井造船が経営統合を検討していると23日付各紙で報道された。両社はホームページ上でひとまず否定したが、生き残りへ再編加速は避けられないだろう。

2008年のリーマン・ショック後、船舶受注が落ち込む日本の造船業界全体が、2014年に国内の船舶受注の残りが底をつくという「2014年問題」に直面している。低価格受注を行う中国や韓国との競争に日本勢としてどう対応していくか。

造船業界において成長分野と期待されている事業の一つが海洋開発事業だ。海底の石油やメタンハイドレート、鉱脈などの資源を採掘するための専用の船舶や海上設備を建造する。現在、川重はブラジルの造船会社を通じてブラジル沖の海底油田開発の受注を目指しているし、三井造船は、子会社の三井海洋開発が海底油田開発の洋上設備を手がけている。

海洋開発分野の世界市場は、造船市場とほぼ同じ規模の約6兆円あり(2011年)、20年には11兆円まで成長するとの予想もある。2011年の海洋開発市場の国別シェアをみるとトップの韓国は39%で、3位の中国は14%。いずれも国策で造船の振興を進めてきたことが背景にある。日本のシェアはわずか1%にすぎないため、日本のエネルギー企業が海洋資源開発をすすめても、施設の建造は韓国や中国の造船会社に委託する例も多いという。

海洋開発は、領有権や主権問題と関係する。一つの例は、1968年頃、尖閣諸島近海に石油が埋蔵されていることが分かってから、中国が尖閣諸島の領有権を主張し始めたことだ。今年に入り、日本では近海にレアアースや金銀の鉱床などが続々と見つかり、メタンハイドレートの掘削も始まっている。安全保障上も、海洋開発を過度に他国に依存せず、日本主導で行える体制を作ることが重要だ。

海洋開発船の建造には高度な技術が必要であり、技術力の高い日本にとって、本来、他国との競争力を持ちうる分野だ。今後は日本の造船業の高付加価値化・高度化をすすめるとともに、官民一体となって海洋開発への投資を行うべきだろう。(晴)

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