日本の医療機器や医療サービスなどの海外展開を助けるため、社団法人メディカル・エクセレンス・ジャパン(MEJ)を経済産業省が23日、改組した。新MEJは、島津製作所やソニーなど日本の医療機器メーカー23社と、全国の57医療機関などが参加する官民共同の組織となる。医療分野は、アベノミクスの三本の矢のうちの一つである成長戦略の対象として、注目されている。

現在、日本の医療産業は年間2兆円の貿易赤字となっている。輸出が奮わない理由の一つに、欧米の医療メーカーが海外市場をすでに押さえていることがあった。インドや中国の医療関係者は欧米に留学することが多く、留学先で使われている機器に習熟するため、帰国してから欧米の機器を導入する傾向が強いという。

MEJは2011年に設立され、外国人が日本で治療を受けるために来日する「医療ツーリズム」の際のビザ取得や病院選びなどに協力してきた。新MEJはそれらに加え、留学生を受け入れて国立がん研究センター病院などの研修を仲介する。彼らに日本の医療機器に習熟してもらい、将来は母国で導入してもらうためだ。また、各国の医療制度を調べて日本企業に情報提供し、各国の関係機関との交渉を代行する。

すでに経産省は中国やロシア、ベトナムなどで市場調査を進めている。新MEJの大型案件として、ロシアで「日本式画像診断センター」が5月に開設する。一方、中東のアラブ首長国連邦(UAE)では、安倍晋三首相が5月の連休中に訪問する際、「日本UAE先端医療センター」の設置に合意する予定だという。

最近の報道では、日本が欧米に比べて先端医療技術の実用化が遅いという点が強調されがちだ。しかし、感染症を克服した段階の新興諸国では、医療の需要はがんなどの免疫病に移り、日本の医療はその分野で進んでいる。新MEJが各国の健康寿命を延ばしつつ、日本の産業を活性化させられるか、今後の展開に注目したい。(居)

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