安倍晋三首相は19日の講演で、6月にまとめる「成長戦略」について明らかにした。金融緩和、財政出動に続くアベノミクス3本の矢の一つである「成長戦略」からは、安倍政権が描く日本の未来構想が見える。

講演の主な論点は以下の通り。

【医療】

医療分野を成長産業とし、医療研究の司令塔である「日本版NIH」の創設などで研究開発を進める。再生医療の実用化を推進するほか、労働力を医療・介護分野に集めていく。

【女性】

育児休業を3歳まで延長するなどの取り組みで、女性の就業率を上げてGDPを押し上げる。

【経済外交】

4月末から5月にかけてロシアや中東を訪問する際、食文化やエネルギー、医療システムなどの分野のトップセールスを行う。アジア・太平洋、欧州などと経済連携交渉を進める。

これらの戦略は、少子高齢化や女性労働力の活用といった日本の課題に踏み込んだものと言える。

経済外交に関しては、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉にすでに政府は力を入れている。20日には、日本の交渉参加について、現加盟国すべての同意が得られた。TPPは、価値観を同じくする国との経済関係を強め、民主主義・自由主義国を中心に貿易などのルールをつくることで、中国包囲網を築くという目的もある。

一方で、日本経済をさらに発展させるためには、国家としての夢や高い目標が必要だ。安倍首相は講演で、東海道新幹線の建設で東京-大阪間が3時間で結ばれたことを、誰もが「夢見る世界」を実現したと表現。技術面のイノベーションや多くの関連産業が生まれ、電車事業が輸出産業へと成長したことを評価した。

しかし「夢見る世界」を語るなら、もっと大規模なビジョンを打ち出すべきではないだろうか。官民ファンドなどを立ち上げ、政府の出資のほかに、1500兆円もある日本の個人資産を動かせば、大規模な投資の波を起こすことができる。

法的な制約や資金不足で日本の技術力を生かし切れていない、宇宙産業や防衛産業に積極的に投資することもできるだろう。例えば、成層圏を飛ぶ「宇宙旅客機」を開発できれば、東京-ニューヨーク間を2時間で結べ、東海道新幹線をはるかに超える移動時間の時間短縮ができる。投資とは将来に期待するからこそ行うものなのだから、夢のあるビジョンを打ち出すことが大事だ。

個人でも社会でも、掲げた目標以上に成長するのは難しい。日本人、そして世界の人々にとっても実現したいと思えるような大きな夢を打ち立て、投資を活発にしていくべきである。(晴)

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