政府は19日、海外で災害やテロなど、緊急事態が起きた際の邦人救出を可能にする自衛隊法改正案を閣議決定した。アルジェリアの人質事件を受けてのもので、今国会中の成立を目指す。

改正案での変更点は以下の通り。

  • これまで航空機や船舶に限られていた邦人救出の手段に「車両」を追加、陸上輸送が可能になる。
  • 自衛隊が保護する対象者を、救出対象者以外にも、同行する家族や企業関係者らにも広げる。
  • 自衛隊派遣の条件を、現行の「安全が確保されていると認めるとき」から「(外相と防衛相が)危険を避ける方策を協議し、安全に輸送できると認めるとき」へと拡大する。

しかし、この改正案では、アルジェリアの事件のように武装勢力に邦人が襲撃を受けた際に、自衛隊が救出に行くことはできない。武器使用基準の緩和が見送られたからだ。

現行の基準では、自衛隊が武器を使用する条件は、任務を遂行する自衛隊員や、管理下の者への攻撃に対して正当防衛を行う場合や、緊急避難に限られている。それ以外の目的で武器を使用すると、「武力行使」にあたる場合があるとして、現在の政府解釈では憲法9条に反してしまう。与党内では憲法の解釈変更も検討されたが、公明党が慎重姿勢であるために見送られた。

安倍晋三首相は16日、この自衛隊法改正案に関し、「武装勢力に邦人が襲撃を受けている際に、保護下にないという判断がなされた場合、救出に行けない。最高司令官として忸怩たるものがある」と悔しさをにじませた。しかし、「憲法9条堅持」の公明党と連立を組んでいる限り、憲法改正や憲法解釈変更は極めて困難だろう。

現在、第二次朝鮮戦争の危機も迫っており、日本周辺での有事やテロ事件はいつ起きてもおかしくない。このままでは、有事の際、朝鮮半島や中国などにいる邦人を救出できない可能性が大だ。いつまでも公明党という「抵抗勢力」と組んでいたら、この国を危機から救えない。 (晴)

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