昨年末にコネチカット州ニュータウンの小学校で起きた銃乱射事件以来、アメリカではオバマ大統領が銃規制の強化を目指している。連邦議会は来週から、銃購入の際の身元調査の厳格化を含めた法案の審議に入るが、議会内にも反対は根強く、法案成立のめどは立っていない。

3月にCBSテレビが行った世論調査では、米国民の47%が銃規制強化に賛成しているが、ニュータウンでの乱射事件後の57%から大きく低下している。

世論の関心が銃規制から離れる中で、州レベルでは逆に銃規制の緩和が進んでいる。今年に入ってから全米の州議会を通過した銃規制緩和につながる法案は23本に上るが、規制強化の法案は8本に過ぎない。例えばアーカンソー州は、教会や大学のキャンパスでの銃携帯禁止を解除した。またサウスダコタ州は、教育委員会が教師に銃を持たせることを認める法律を制定している。

こうした動きの背景にあるのは、銃を持つ権利を擁護する圧力団体の積極的な活動だ。全米ライフル協会(NRA)など、銃擁護を訴える圧力団体は、昨年までの5年間で230万ドルをロビー活動に注ぎ込んだが、銃規制を訴えるグループは5万5千ドルしか使っていない。

銃規制の強化よりも、銃犯罪から自らの身を守るために、むしろ自ら銃を持つべきだという考え方も根強い。NRAの特別委員会はこのほど、学校のセキュリティー強化についての提言を発表した。提言は、学校の警備員がもっと銃を携帯できるようにすることを呼びかけ、そのためのトレーニング・プログラムを提示している。

国際関係学には、「安全保障のジレンマ」という概念がある。A国が軍備を増強すれば、たとえそれが防衛目的であったとしても、B国は脅威に感じて自国の軍備を増やしかねない。その結果、A国はまた軍備を強化し、軍拡競争に発展していく。NRAなどの「銃を以って銃を制する」という考え方は、これに通じるものがあるだろう。

アメリカはすでに、国民が互いに武器を向け合う銃社会になってしまっている。銃による国民の武装を、"軍縮"する試みも必要なのではないだろうか。

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