日銀は4日、黒田東彦総裁の新体制下で初となる金融政策決定会合で、大規模な金融緩和の実施を決めた。経済に流通するお金の量である「マネタリー・ベース」を年60~70兆円の規模で増やして、2年間で2倍にするのが目玉。加えて、長期国債やその他の金融資産も買い増し、市場に大規模な資金を供給する。

今回打ち出された金融政策で、2012年末に138兆円だったマネタリー・ベースの規模は、2014年末に270兆円にまで増加する。ここ2年間の日銀のマネタリー・ベースの伸びは1.3倍弱にとどまっており、これまでの日銀との違いが際立つ。日銀は、こうした大規模な金融緩和によって、2%の物価目標を2年程度を念頭に達成できるよう取り組むとしている。

2008年のリーマンショック後、米FRB(連邦準備理事会)がマネタリー・ベースを約3倍にまで増やすなど、各国の中央銀行は積極的な金融緩和を行った。「金融緩和だけでデフレは脱却できない」を言い訳に、必要な緩和策を怠ってきた白川方明・前総裁の日銀とは対照的だ。その結果、流通するお金の絶対量が少ないため、経済の循環が悪くなり、デフレ不況の長期化につながった。また、日本円の流通量が他の通貨に比して少ないため、過度の円高も発生し、家電メーカーなどの経営危機の一因ともなった。

アベノミクスの登場と日銀新体制の発足で、ようやく日本も世界では当たり前の金融政策を取るようになったと言える。一方で、アベノミクスはまだ期待による株高を招いている段階にすぎない。実際に、先月末に発表された2月の完全失業率は2カ月ぶりに悪化しており、実体経済の浮揚が待たれる。日銀が潤沢に供給する資金をテコに、民間経済の活性化や公共事業によって好景気の波をつくれるかが、アベノミクスの勝負どころになるだろう。

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