東京株式市場は29日、日経平均株価1万2397円91銭の終値で、2012年度の取引を終えた。同年度の日経平均は23%上昇し、年度末としては5年ぶりの高値を記録。昨年末に野田佳彦首相が衆院解散を表明した後に限れば43%という上昇率になった。

アベノミクスがその要因の一つであることは間違いない。安倍晋三首相が、大規模な金融緩和を打ち出したことで、デフレ脱却の期待が先行して投資が活発になり、株価を押し上げている。株高によって、上場企業が保有する株式の含み益は、1年間で6割も増えたという調査もあり、企業収益にも改善が見られる(30日付朝日新聞)。

長期不況脱却に向けて薄日が差し始めた日本経済だが、この期待を実体ある経済成長に結び付けられるかがこれからの課題だ。来月3日から4日には、黒田東彦・日銀総裁の下で初めてとなる金融政策決定会合が開かれ、デフレ脱却に向けた大胆な金融緩和などが議題にのぼると見られる。安倍政権は、金融緩和で増加する市場の資金が、経済にうまく循環していくように、冷え込んでいる需要を大規模な公共投資などで刺激していく必要がある。

一方で、アベノミクスの「死角」となりそうなのが、相次いでいる電気料金の値上げだ。5月の全国平均の電気料金は、震災前に比べて約1割増の7087円となり、家計を圧迫している。原発停止で低下している発電量を、各電力会社は火力発電などで補っているが、昨今の円安によって燃料の輸入コストが高まっているのだ。

電気料金の問題を解決するには、原発の再稼働で安く電力を提供できるようにすることが、最善の策だ。安倍首相は「世論の動向」などを気にして再稼働に二の足を踏んでいるが、長期不況を脱出して国民生活を楽にするためにも、早期に原発再稼働に踏み切るべきだろう。

期待先行で景気が活発になるのは良いが、アベノミクスの真価が問われるのはこれからだ。来年に控える消費税増税や、電気料金値上げなど、景気の腰を折りかねない問題を一つずつ片づけていかねばならない。

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