東京大学地震研究所の佐藤比呂志教授(構造地質学)が28日、掘削調査を行っていた東京郊外の「立川断層帯」で、「活断層」とした以前の発表について、コンクリートのような人工物を活断層の根拠として見誤っていたことを明らかにした。
28日付夕刊各紙によると、佐藤教授の研究チームは昨年10月から今年2月にかけて、全長約33kmの立川断層が走る東京都立川市と武蔵村山市の境界周辺を調査。2月に「活断層を発見した」と発表していた。
しかし、その後に行った一般公開で、見学に訪れた土木工事関係者から、現場に異物が混じっている可能性を指摘され、再調査したところ、「断層の証拠」としていた岩石の塊は、以前この土地にあった自動車工場の基礎工事に使われたコンクリート製のくいの可能性が高いことが判明。28日の会見で、佐藤教授は「断層がある、と考えていた場所から物が出てきた。ある種の催眠術にかかってしまっていた」と謝罪した。
佐藤教授は、青森県の東北電力・東通原子力発電所の敷地断層について、2月に「活断層」と認定した原子力規制員会(以下、規制委)の専門家チームの一人。ミスへの謝罪は当然だが、研究者として本当に紳士的な態度を取るのであれば、合わせて、「活断層の有無で地震予知はできない。その活断層の有無を、原子力発電所を止める絶対的な基準とすることは国益に叶わない」と告白すべきだ。
規制委は、福井県の敦賀原発や東通原発の敷地内に「活断層がある」として、廃炉や厳重な耐震補強を求め、事実上の原発狩りを進めている。さらに、全国の原発に義務付ける新しい安全基準づくりに入っており、7月に正式決定すれば、「活断層」基準を含め、過剰な基準で全国の原発の再稼働を遅らせることになる。
佐藤教授の言葉を借りれば、今の日本の現状は「断層があると危ない、と考えていた。ある種の催眠術にかかってしまっていた」という状況だ。安倍政権は今こそ、活断層の有無を絶対基準として原発狩りを進める規制委の“催眠術"から自由になるべきである。(格)
【関連記事】
2013年2月19日付本欄 東通原発に「活断層」認定 規制委は「地震は予知できない」と告白すべき
http://www.the-liberty.com/article.php?item_id=5629
2013年1月25日付 Web特別記事 原発「活断層」調査 「活断層即廃炉」は非科学的な“魔女狩り"だ