北京で開催中の第12回中国全国人民代表大会で14日、総書記の習近平氏が国家主席に選出された。これによって習氏は党(総書記)、軍(委員会主席)、国家(主席)の3権力を掌握したことになる。
習氏のように、国家主席就任時にすでに軍を手中に収めているのは、中国では決して当たり前のことではない。中国では、「軍を握った者が国を握る」というほど軍部が重視され、国家や党のトップを降りた後も軍主席の地位を手放さない場合がある。その顕著な例が、トウ小平氏や江沢民氏だ。
トウ小平氏は党では序列一位にはならなかったが、軍主席として軍部を掌握。1987年に党中央委員を退いた後も2年間、軍主席を維持し続けた。87年には「今後も重要な議題についてはトウ小平の意見を仰ぐ」との秘密決議があったという。
習氏の前任である胡錦涛氏の場合は、その前の江沢民氏が、党総書記を辞任した後も軍主席を2年間手放さかったため、その分、軍の掌握が遅れた。
これに対して習氏は、総書記に就任した2012年11月15日、同時に軍主席に就任している。以降、陸・海・空軍やミサイル部隊など9回も軍を視察し、権力の掌握に余念がない。視察の場では「軍事闘争の準備を整えよう」「強固な国防と強大な軍隊を建設せよ」と、まるで戦時下のような訓示を出しているという。これまでの中国指導部も戦争準備に関する発言をしていたが、習氏の表現はより強硬的だと専門家は指摘する。
素早く権力を掌握し、実行力を高める習氏の下で進む中国の軍国主義化に、日本は警戒する必要がある。今年1月には、尖閣諸島周辺での日本の自衛艦に対する中国海軍のレーダー照射事件が起きた。こうした中国の動きに対し、日本政府は独自で国防力を高めるべきである。また、15日に参加を表明したTPPという"中国包囲網"や、アジア各国との連携強化、日米同盟の強化なども推し進めるべきだろう。(居)
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