北朝鮮軍の報道官は5日、米韓が合同軍事演習「キー・リゾルブ」を開始する11日から、朝鮮戦争の休戦協定を白紙化するという声明を発表した。6日付各紙が報じた。
声明は、米韓の軍事演習などへの対抗措置として、さらなるミサイル発射や核実験などを示唆した。また、軍事演習を「露骨な軍事的挑発行為であり、休戦協定に対する体系的破壊行為の発露だ」と非難し、「制限なく精密攻撃を加えて祖国統一事業を前倒しする」などと強調した。
北朝鮮が休戦協定の破棄に言及したのは今回が初めてではなく、2009年の2度目の核実験の後に、韓国がアメリカ主導の大量破壊兵器拡散防止構想への参加を表明した時にも行っている。1950年に始まった朝鮮戦争では1953年に休戦協定が締結されたが、平和条約は結ばれておらず、正式にはいまだ戦争状態にある。
今回の声明は軍事演習で北朝鮮を牽制する米韓を挑発する意味合いがある。11日から21日までを予定している米韓の合同訓練「キー・リゾルブ」は、2015年12月に有事の作戦指揮権がアメリカから韓国に移ることへの準備を含んだ朝鮮半島有事のシミュレーションであり、韓国軍1万人、米軍3500人が参加する。また、米韓は今月1日から4月30日まで、野外機動訓練を含む合同訓練「フォール・イーグル」も行っている。
今回の北朝鮮の声明のもう一つの狙いは、諸外国のさらなる制裁への牽制と思われる。国連では、先月に北朝鮮が強行した3度目の地下核実験に対する、新たな制裁案について米中両国が5日、基本合意に至ったとされる。
度重なる挑発はアメリカを直接交渉のテーブルに引き出す狙いもあると見られるが、アメリカが動じる気配はない。米ホワイトハウスのカーニー報道官は5日、「こうした挑発は何ら新しくない」「脅しや挑発によって北朝鮮が得るものは何もなく、自ら孤立を深め、北東アジアの平和と安定を確実にしようとする国際努力を傷つけるだけです」と、北朝鮮の声明を一蹴している。
一方で、韓国の朴槿恵大統領は、組閣を完了できないまま5日に国会を閉幕しており、国防の緊急事態にきちんと対応できるのか不安視される。韓国国防省は6日午後、「(反撃の)すべての準備を整えている」という声明を発表して北朝鮮を牽制したが、北朝鮮の核実験に対して韓国では核武装論が出るなど、朝鮮半島は軍拡競争の様相を呈している。この一触即発の状況の中で、挑発が過剰反応を生み、戦闘が始まらないか懸念される。(居)
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