上海を拠点にする中国人民解放軍の部隊が、アメリカ企業などに対する大規模なサイバー攻撃に関わっていることが濃厚になった。アメリカのコンピューター・セキュリティー会社が、19日に発表したレポートで明らかにしたもの。レポートは、中国軍関連のハッキング集団が2006年からの7年間に、141の企業からデータを盗み取っていたとしている。

アメリカではニューヨーク・タイムズ紙など大手メディアが、中国からと見られるサイバー攻撃を受けたと表明している。他にもサイバー攻撃は、石油ガス・パイプラインに関係する企業にまで及んでおり、場合によっては国内のエネルギー供給が危険にさらされかねないリスクを露呈している。

これについて、オバマ大統領は12日の一般教書演説で、「敵は、送電システムや金融機関、航空管制システムまでも麻痺させる能力を持とうと取り組んでいる」と指摘した。オバマ氏は、インターネットのプロバイダとの情報共有を強化する行政命令を発したほか、攻撃の可能性が高まった際に先制サイバー攻撃が行えるようにすることを検討している。

中国発のサイバー攻撃はここ最近、急増している。米ネット関連企業のアカマイ・テクノロジーズ社の調べによれば、昨年の第3四半期における、ウィルス送信などの攻撃的トラフィックは、中国からのものが一番多かった。世界の攻撃的トラフィックのうち中国が占める割合は、第2四半期に16%だったが、第3四半期には33%に倍増している。

国外からの攻撃の他に、「トロイの木馬」のようにネットワーク内に侵入されるケースもある。米下院は中国の通信機器大手の華為技術(フアーウェイ)とZTEの両社を、「安全保障上の脅威」と認定している。両社が供給する機器を使えば、通信を中国側に傍受される危険があるというのが、その理由だ。特に、人民解放軍の出身者がCEOを務める華為技術は、中国軍のサイバー戦争部門にサービスを提供していたという証拠も出てきている。

アメリカを追い出して西太平洋の覇権を握ろうとしている中国だが、軍事技術力の差から、まだ直接対決を挑める段階にはないという見方がある。しかし、春秋時代の軍事戦略家・孫子の言う「戦わずして勝つ戦略」を研究している中国は、直接対決を避けながらも、サイバー空間を通じてアメリカにじわじわと攻め込んでいると言える。ハト派が「米中対話」をいくら主張しても、“覇権戦争"が水面下で始まっていることは疑いようがない。

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