13日午前5時頃、宮古島の北東約100キロの海域を中国艦船が北西へ通過するのを海上自衛隊の護衛艦「やまぎり」とP3C哨戒機が確認した。中国艦隊が同海域を通過するのは今年2回目で、前回1月31日に同海域を通過した艦艇と同じであることから、西太平洋での訓練を終えて帰還したものとみられる。

今までは、日本列島・台湾・フィリピンを結んだ「第一列島線」で中国の太平洋への海洋進出を封じ込められると考えられていたが、近年では、中国艦隊は沖縄の宮古海峡や鹿児島の大隅海峡を通過し、西太平洋で海上訓練を頻繁に行なっている。これは「列島線突破訓練」と呼ばれ、昨年は7回実施された。

キーティング米太平洋軍司令官(当時)は、2007年に訪中した際に、中国海軍の幹部から「将来、中国と米国で、太平洋をハワイで二分する」という太平洋分割案を提示されたことを明らかにしている。またクリントン国務長官(当時)が、中国と南シナ海の領有権問題を協議した際も、「ハワイの領有権を主張することもできる」と中国側が発言したもようだ。

このように、中国の太平洋進出の意図は明らかで、「列島線突破訓練」は、日本はもちろん、アメリカに対しての挑発行為とも言える。

日本は、中国海軍が西太平洋に出航する度に自衛隊の艦艇と偵察機を派遣し、「全過程を撮影」しているというが、今回も日本は中国に対して目立った抗議をしていない。確かに、宮古海峡や大隅海峡は国際海域であり、訓練も公海上で行われているため、国際法上の問題はないのかもしれないが、「全過程を撮影」することしかできない対応が続くと、今後も日本は中国に「列島線突破」という形でなめられ続けることになるだろう。

アメリカは、沖縄に駐留している海兵隊の一部をグアム、ハワイ、オーストラリアで巡回させようとしており、中国の西太平洋進出を見越した対応を迫られている。米軍の主力が西太平洋に移ろうとしているため、日本は、アメリカにすべてを頼るのではなく、「自分の国は自分で守る」という国家として当たり前の姿勢を取らなければならない。日本は、北朝鮮の北からの脅威のみにとらわれて、中国による「南からの脅威」に対する備えを疎かにしてはならない。(飯)

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